レンジャーと捜索救助犬の二人三脚

「ここは住むにも働くにも最高の場所です。自然公園のレンジャーを生業にできるなんて、以前は信じられませんでした」

かつて働いていたスキー場で、人と犬のチームによる仕事を目の当たりにしたベネット氏はその姿に憧れ、犬と共に仕事をしたいと2018年に国立公園局のレンジャーになった。国立公園を訪れる旅行者の安全をサポートすること、それがベネット氏の大切な使命の一つだ。搜索救助犬の相方リロイと共にK-9と呼ばれる人と犬によるプロフェッショナルチームを組み、これまでに115人もの遭難者の救助に成功してきた。

「リロイは並外れた追跡能力を持っているジャーマン·シェパードです。私たちは国立公園局で唯一のK-9チームなんです」

リロイの優れた能力を証明する印象的なエピソードがある。それは2021年11月、レイク·ルイーズ近くのトレイルでハイカーの夜間捜索をした時のことだ。「暗闇の中、リロイはハイカーの足跡とハイカーに同行していた小型犬の匂いを頼りに山の中を進んでいきました。搜索は夜中まで続きましたが、探し始めてから約20kmの地点で助けを求める声が聞こえ、遭難者を発見しました。これは私とリロイによる捜索救助活動の経験の中でも最も長く、大変なものとなりました」

引き継がれる人類の自然遺産

国立公園の歴史はわずか130年あまり。人類の歴史と比べれば、人が自然環境の大切さについて深く考えだしたのは比較的最近のことと言える。「私たちはこの手つかずの美しい場所を維持するために最善を尽くし、その仕事に携われることを誇りにしています」

約6,000万年前、造山活動の隆起により形成されたカナディアンロッキーの山々。そこには未だ多くの野生動物が生息し、人の手が加えられていない唯一無二の自然が残されている。「今ある生態系を守り、後世に残していくことが私たちの使命の一つです。しかし、自然と文化資源の保護だけでなく、教育を通して人々の理解を深めることや、訪れる人々の体験の質を向上して豊かなものにすることもとても大切なことなのです」

本来、人間にとって厳しいものであるはずの自然環境を誰でも安全に楽しむことができるのは、国立公園という自然保護とレクリエーションのパランスを取るシステムが確立していることが大きな理由の一つだ。そして、それは多くのレンジャーや職員たちの絶え間ない努力により実現していることは間遠いない。