壮大な絶景と響き渡る轟音。ここは世界三大瀑布のひとつで、地質学上の驚異とも言えるナイアガラの滝。国境のカナダ側にあるカナダ滝(ホースシュー滝)とアメリカ側にあるアメリカ滝、その右にある小さな滝(ブライダルベール滝)の3つの滝から構成されています。最も大きいカナダ滝の大きさは落差52m、幅675m。大自然によって創造された力強さと美しさを感じさせる大瀑布は世界中の人々を魅了し、この滝をひと目見ようと年間1300万人もの観光客がナイアガラを訪れています。ナイアガラの滝は、五大湖のうちエリー湖、ヒューロン湖、ミシガン湖、スペリオル湖の4つの湖を水源とします。滝を流れ落ちた水は、ナイアガラ川を下ってオンタリオ湖へ注ぎ、セントローレンス川を経由して大西洋に流れ込みます。
この巨大な滝は、一体どのようにして誕生したのか。約18000年前、オンタリオ州南部は厚さ3000mの氷床に覆われていました。その後、長い氷期の期間を経て氷河は岩盤を削って五大湖を生み出し、最後の氷期が終わった約13000年前に地球が温暖化によって氷は一気に溶け出し、大量の融雪水を放出。そして約12000年前に現在の姿のナイアガラの滝が形成されましたと言われています。冬には滝の一部が凍結した美しい姿を見せるナイアガラの滝。氷期の歴史を想像すれば、この美しさがより神秘的に感じることでしょう。
私たちの想像を超える自然の力。それを肌で感じることができるものが、滝の下流にあるナイアガラ川岸の森の中にあります。それは「ポットホール」と呼ばれる丸い穴の開いた大きな岩。実はこの穴は、滝壺や川底で岩のくぼみに小さな石が流れ込み、激しい水流によってドリルのようにクルクルと回転して、このような奇妙な形へと姿を変えたものです。今では静かに森の中に佇むポットホールですが、じっと眺めていると、水の流れの凄まじさを私たちに語り掛けてくる気がします。
ものすごい水量のナイアガラの滝の水は、20キロ上流に広がるエリー湖から発し、その水の90%がカナダ滝に流れているのです。元々は1時間当たり55億ガロンの水が滝を流れていましたが、現在は侵食のスピードを抑えるため、カナダ、アメリカの両政府が水量の調整を行っています。滝の端は現在より11キロも下流にあったとされており、水の流れの調節が始まる1950年代まで、滝のふちは浸食により毎年1メートルずつ後退していたそうです。また、水の一部はアメリカおよびカナダへの電力供給のために流用されており、今ではナイアガラの滝は世界最大級の電力源となっています。偉大なナイアガラの滝は、カナダの観光だけでなく、オンタリオの人々の生活も支えているのです。