アルバータ州といえば、牧場やカナディアン・ロッキー、油田地帯のある州といったイメージが一般的。ところが現在は、カナダ西部屈指のカルチャー発信地として注目を浴びています。例えば都市部のカルガリー。カナディアン・ロッキーの玄関口でもあるカルガリーは、舞台やバレエが盛んで、近年は音楽分野でも活発な活動を繰り広げています。現在、世界のアートシーンで新たな役割を担おうと、視覚芸術にも力を入れています。
アルバータ州の中心に位置するエドモントンで今、話題になっているのが、新装オープンしたアルバータ美術館。また、州内各地でポップアップ型の期間限定の展示会や、アーティスト主体で運営するショーが開催されています。それほどまでにアルバータのアートシーンは盛り上がっています。
カルガリーのアートシーンの中心地
「多様性」「活気」「発展著しい」…。そんな言葉で語られることの多いアルバータ州のカルガリー「カウ・タウン(牛の街)」。ボウ川沿いにあるこの地が今、アート発信地、新しいアートの街として盛り上がっています。まず訪れたいのは、美術館、図書館、博物館、歴史資料館と多彩な顔を持つグレンボウ博物館です。近年では、定評あるカナダ北西部のアートの収集に力を入れています。カルガリーを代表する美術館であり、最古の文化施設でもあるグレンボウ博物館は、カナダ西部の膨大な歴史的な資料、現代・近代のアート作品のほか、型押しガラス作品1800点を始め、28000点もの作品・資料を収蔵しています。また、来館者がさまざまな形でアートに触れられる体験を用意していることでも知られます。
続いてご紹介するのはコンテンポラリー・カルガリー。これはカルガリー美術館など3つの視覚芸術団体による合同プロジェクトです。現在はまだ立地検討段階ですが、カルガリーの近現代アートの発信地をめざしています。カルガリーに特化した(もちろん充実した内容の)美術館の開設は、地元の人々の願いでもあり、コンテンポラリー・カルガリーもこの構想に大きな情熱を燃やしています。市内には公共スペースを彩る大規模な屋外アートがあふれ、パブリック・アートやプライベート・アート作品全56点を紹介するダウンタウン・ガイドも用意されています。
カルガリーの近現代アート
アートシーンの核となるような場がなかったカルガリーでは、地元アーティストによるネットワークが大きな役割を果たしていますが、同じようにカルガリーの主要教育機関もアートシーンの重要な一角を担っています。実際、精力的でちょっと強気、しかも大胆な活動を繰り広げています。例えばアルバータ芸術大学のイリングワース・カー・ギャラリーは前衛的なショーやイベントを開催しています。既成概念にとらわれない新たな取り組みに定評あるのが、エスカー財団所有のニックル・ギャラリーズ。1400平方メートルという広大なスペースを生かし、多くの草の根活動に加えて、作家主体で運営する展覧会、才能あふれる新進気鋭の作家が手がける期間限定の展覧会が開催されています。主催は非営利団体のアンタイトルド(無名)・アート・ソサエティ(UAS)やストライド・アート・ギャラリー・アソシエーションなどの団体です。アルバータは、人口100万人クラスの大都市のような激しい競争とは無縁のため、アーティストのネットワークは一種のコミュニティを形成していて、観光客にも地元の人々にも気軽に交流しやすいアットホームな雰囲気に包まれています。
エドモントン市街を彩るアートや建築
1924年に建設され、2010年の全面改装を経て展示スペースが倍増となった州都エドモントンのアルバータ美術館。ガラスのアトリウムがある約7900平方メートルの見事な公共アートスペースです。建物を覆う全長200メートルものリボン状の鋼板は、エドモントンの象徴であるノース・サスカチュワン川とオーロラを表現しています。カナダの抽象画や彫刻に重点を置き、カナダ内外の作家が手がける現代絵画や歴史画、彫刻、写真、インスタレーションなど6000点以上を展示しています。もちろん展示作品も、建物に負けず劣らず刺激的です。7月に開催されるホワイト・アベニュー・アート・ウォークも必見です。野外ギャラリー・工房とも言われるイベントです。アルバータ各地から集まった450人の作家がオールド・ストラスコナ・アート地区の通りを3日間にわたって占拠、絵画やスケッチ、彫刻作品の制作に取り組みます。制作者と見る者の交流を通して、両者の距離がぐっと近づきます。
美しいバンフのアート拠点
アドベンチャーとアートのどちらも楽しむならバンフ。有名なバンフ・センター・フォー・アーツ・アンド・クリエイティビティは話題のイベントやサミット、フェスティバル、アート、映画、音楽、パフォーマンスに、カナディアン・ロッキーの壮大さや活気あるマウンテンリゾート、バンフの自然美を絶妙に組み合わせています。厳選された展覧会だけでなく、視覚芸術やデジタルアート分野で活躍するアーティストを招いた体験型ワークショップや参加型アートプロジェクトもあり、その中には写真や陶芸、絵画、織物、紙すき、彫刻、版画、さらには大規模な本物の緑のカーテンをスクリーンに利用したプロジェクションマッピングなどが含まれます。
エドモントンの奇抜でクールな工芸作家
ほかでは見られない一風変わったアートなら、エドモントンで開催されるロイヤル・バイソン・フェアがおすすめです。年2回開催のフェアで、それぞれ毎回週末2連続で多くのショップが並び、エドモントン随一の奇抜さや驚きがあふれるデザインやクラフト、アート作品が集まります。版画や写真、織物、木工、アパレル、おもちゃ、もちろん自分へのギフトに使えそうなアイテムなどが2つの大きな部屋に所狭しと並び、常連客で賑わいます。このフェアは70のメーカーやデザイナー、イラストレーターの「厳選アイテム」が売り。手作りの本や植物を使ったアート作品など、文字どおり特別な掘り出し物にきっと出会えます。ロイヤル・バイソン・フェア会場からは、賑やかなオールド・ストラスコナ・ファーマーズ・マーケットにも近いため、ここでピクニック用品を調達して、地元の人たちと交流しながらピクニックを楽しむこともできます。
将来性に満ちたアルバータの視覚芸術の最先端を体験する価値は十分にあります。特にアルバータが視覚芸術の発信地として成長を続けている今がチャンス。さらにおすすめしたいのがコテージ宿泊とワイナリーを組み合わせたワインコテージ。寄り道してでも一度は訪れたいロード・トリップと言えます。さまざまなワインを少しずつ味わいながら文化の奥深さに思いを馳せるルネッサンス風の旅に興じてみませんか。
旅のヒントは、アルバータ観光公社のウェブサイトでどうぞ。