カナダには、160万人以上の先住民が暮らし、総人口の4.9パーセントを占めています。先住民は、ファースト・ネーションズ(北米インディアン)、メイティ(先住民とヨーロッパ人の間に生まれた子孫)、イヌイット(カナダ北部に住む先住民)の3グループに大きく分かれます。太古の昔からこの地に生き、植民地化や隔離政策、不平等といった忘れがたい歴史を背負いながらも、その文化や言語、精神的世界観は依然としてカナダ発展の重要な一角を占めています。カナダを訪れたら、訪問先の土地がそもそもどのような人々に伝わってきた土地なのか、しばし歴史に思いを馳せ、人生観が変わるほどの文化体験を味わってみませんか。

ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー
現在のバンクーバーがある土地は、元々、マスキーム族スコーミッシュ族ツレイル・ウォウトゥス族が何千年も前から住み続けてきた土地ですが、後の植民地化で正式な条約も結ばれることなく先住民から取り上げられてしまった歴史があります。豊かな伝統と興味の尽きない歴史をじっくりと味わえるスポットをご紹介します。

セイヌスカウユム(Say Nuth Khaw Yum)州立公園(別名インディアンアーム公園)は、ツレイル・ウォウトゥス族とBC州が共同で管理しています。かつて一帯は厚い氷河に覆われ、氷河が消えたあとには、険しい山々や高山湖、落差50メートルのグラニット・フォールズを始めとする滝などの絶景が残されました。カヤック、釣り、スキューバダイビングが楽しめ、キャンプ場も多数あります。

・ランドマークでもあるスタンレーパークは、タレイセイ・ツアーズが企画する「トーキング・ツリーズ・ツアー」があり、先住民文化アンバサダーの案内で園内を散策します。このトレッキングツアーは全行程1時間半。かつてコースト・セイリッシュ族が食料はもとより、ものづくりや薬にも使っていた現地固有種の植物をガイドが案内します。

・エコツーリズム・ベンチャーのタカヤツアーズでは、レプリカの外洋向けカヌーやシーカヤックを使ったガイド付きボートツアーを開催しています。ツアーでは、バラード入江やインディアンアームの保護水域で安全にパドリング。コースト・セイリッシュ族のガイドからは、歌や伝承の披露、さらに古代の集落遺跡の案内があります。 

アルバータ州エドモントン
エドモントンは、都市部の先住民人口としては、カナダ第2位の規模を誇ります(52,000人以上、全人口の5%に相当)。先住民の視点から捉えたエドモントンを堪能できる体験やアトラクションが多数あります。

・フォート・エドモントン公園で1億6500万ドルを投じて進められていたリニューアル工事が完了し、新たに先住民体験施設が誕生しました。生きた歴史を展示する博物館としてはカナダ最大級。この地域の先住民であるファースト・ネーションズやメイティの伝統的な暮らしぶりを垣間見ることができます。展示内容は、先住民の長老や歴史学者、教育者、コミュニティ住民など50人以上から聞き取りなどで収集した物語や音楽、芸術、文献のほか、歴史的な文書や研究成果もあります。

・何百万年ものアルバータの歴史をたどるロイヤル・アルバータ博物館には、先住民に由来する資料18,000点が収蔵されています。同博物館の人類史ホールでは、現代のファースト・ネーションズやメイティの様子を描いたインタラクティブ展示「What Makes Us Strong(私たちの強さの根源)」が開催されています。そのほか、自然界での先住民のイノベーション、植民地化の時代に独自の文化を守り続けた不屈の精神なども展示を通じて知ることができます。 博物館全体の展示パネルは、英語、フランス語に加え、クリー語、ブラックフット語、ナコタ語など先住民の言語でも書かれています。

・アルバータ州エドモントンのトーキング・ロック・ツアーズでは、この地域の地質学的に不思議なスポットを巡る小グループツアーを開催しています。この地を何百年にも渡って故郷と呼んできた先住民自身による自然や文化の語りもあります。エドモントン・リバー・バレー・ディスカバリー・ツアーは、アルバータ州の州都であるエドモントン市内や世界的に有名な川谷(リバー・バレー)のハイキングが楽しめます。1万年もの間、この聖なる地に足を運ぶ人々がいた事実に気づくはずです。また、円座になって先住民の音楽や語りに耳を傾けるチャンスもあります。

カナディアン・ロッキー
カナディアン・ロッキーには、紀元前1万年ごろから先住民が定住しています。「世界の背骨」とも言われるカナディアン・ロッキー。そびえ立つ山々、高山の草原、ターコイズブルーの湖、激流の滝など心の癒しを求めて多くの人々が訪れます。この地をたっぷり楽しむ各種ガイド付きツアーがあります。

・カルガリーに拠点を置く100%先住民経営のペインテッドウォーリアーズでは、文化体験、憩いの隠れ家、グランピング、週末サバイバル体験、薬草探しの散策、アーチェリーなど多彩なアウトドア・プログラムを揃えています。アウトドアの魅力をとことん堪能しながら、ハンティングや大自然サバイバル術、乗馬など新しいテクニックも身につけるチャンスです。

・カナディアン・ロッキーの麓にあるトレーディングポストは、100年近くに渡って地域社会のニーズに応えてきました。伝統のモカシンやマクラク、セーターを始め、先住民が製作する品々があります。

・シンガーソングライター、ミュージシャン、伝統ドラム演奏家、アーティストなど多才ぶりを発揮するマトリシア・ブラウンは、スタージョン・レイク・クリー族の出身。そんな彼女がジャスパーでの参加型のストーリーテリング、歌、暖炉を囲んでの語らいを通じて、先住民の文化・歴史を案内するプライベートツアーを受け入れています。ドラム演奏グループのウォーリアー・ウィメンの一員でもあるマトリシアが開催する暖炉を囲んでの語らいでは、赤々と燃える火を参加者と囲み、マトリシアが娘のマッケンジーと一緒に物語やドラム演奏、歌唱を披露し、先住民文化について語り合います。

マニトバ州ウィニペグ
マニトバ州では、ありとあらゆる体験に先住民文化が色濃く反映されています。特にウィニペグは、カナダ最大の先住民人口を擁する街とあって、その傾向がはっきりと見て取れます。当然、地元先住民であるファースト・ネーションズの歴史や文化を伝えるアトラクションや体験が多数あります。

・3月、ウィニペグ美術館(WAG)に、イヌイットの芸術・文化に特化した画期的な新美術館、カマユグ(Qaumajug)がオープンしました。この種の施設としては他に類を見ないカマユグは、現代イヌイット芸術のコレクションを収蔵する世界最大の公共施設で、アーティストや先住民のアドバイザー、パートナー、ステークホルダーの全体的なビジョンを具現化した拠点でもあります。オンラインのオープニングセレモニーの様子を収めた動画はこちら

・歩きや自転車で街を散策すれば、あちらこちらで先住民アーティストによる力強いインスタレーションが目に飛び込んできます。例えば高さ5メートルのティーケトル。その気になれば250人分のお茶を用意できるだけの水が入るとか。また、母なる大地をモチーフにした妊婦を象徴する彫刻もあります。 

フィースト・カフェ・ビストロでは、カワカマス、バイソンのリブ、バノックがお薦め。同店のオーナーシェフは、ペグイス族の出身で、家庭誌『Canadian Living』や食専門テレビ局「Food Network Canada」などの主要メディアでもたびたび登場しています。どのメニューも、私たちの食のために命を犠牲にしてくれた植物や動物への敬意が感じられ、絆づくりや物語の紹介を何よりも大切にしています。食事ならバノック・ピザやバック・トゥ・バイソン・チェダー・バーガーがお薦めです。本場の味を堪能できます。

オンタリオ州トロント
オンタリオ州内で最大の先住民人口を擁するトロント。その数は70,000人に達します。それだけに、地元先住民への敬意を込めた美術館・博物館やフェスティバル、さらにはアプリまであります。

・ユナイテッドウェイが資金提供したトロント・ネイティブ・カナディアン・センターは、市内の先住民が安心して暮らせるコミュニティ・スペースであるとともに、あらゆるビジターを迎え入れ、先住民の文化や世界観を知ってもらう場にもなっています。このセンターで提供しているサービスやプログラムには、伝統的なドラムやビーズ細工、先住民の言語を学ぶワークショップのほか、土地の歴史に親しむバスツアーがあります。

・トロントに拠点を置く企業3社のパートナーシップで誕生した「Whose Land」というアプリは、この国の開拓者である先住民やそのコミュニティにまつわるさまざまなストーリーが満載です。無償でダウンロードできる同アプリでは、歴史上のさまざまな出来事、先住民との条約に関する情報、ランドアクノーレッジメント(元々その土地に暮らしてきた先住民に敬意を表してイベントや儀式などで読み上げる文面)などを学ぶことができます。

・毎年恒例のImagineNATIVE映画+メディア・アーツ・フェスティバルは、カナダや海外の先住民の映画製作者やメディア・アーティストに光を当てる公式チャリティ・イベントです。同種のイベントとしては世界最大規模を誇るImagineNATIVEは、定期的にカナダ各地で上映会を開催し、すべてのカナダ国民が先住民の手がける映画作品を鑑賞する機会を提供しています

ケベック州モントリオール
モホーク族(カニエンケハカ)の言葉で「ティオターケ」、アニシナーベ族の言葉で「ムーニヤーン」と呼ばれるモントリオールには、先住民文化が数多く見られます。

・マッコード博物館の先住民文化コレクションは、16,000点以上の考古学的資料を収蔵し、12,000年近い歴史を俯瞰できます。この膨大なコレクションの中でも特筆すべき量を誇るのが服飾品の数々。また、北極圏地方で集められた品々も展示されています。

・毎年8月になると、モントリールでは9日間に渡るモントリオール先住民フェスティバルが開催されます。ダウンタウン各所にある会場では、コンサートやアートショー、先住民のストリートフード、セミナーなどのプログラムが目白押し。カナダはもちろん、世界の先住民をたたえるフェスティバルです。

・元々、カボットスクエアの古い公衆トイレを改装して誕生したラウンドハウスカフェ。内部はがらりと変わっても、ほっと一息つける場であることは変わりないようです。カフェでは、食事系・スイーツ系の各種バノックや、モホーク族風サラダなど、伝統的な先住民料理が味わえます。売り上げの一部は、ホームレスの先住民のほか、社会的弱者の支援にあてられます。このカフェを運営するのは、ホームレスや社会的弱者が抱える問題を主に扱う『L'Itinéraire』誌。同誌のスタッフにはこうした人々が多く雇用されています。 

ノバ・スコシア州ケープ・ブレトン
1万3000年以上の長きに渡り、ミクマク族は、この美しい大地を故郷として暮らし、ノバ・スコシアに数々の伝説や芸術、音楽、精神世界、歴史、言語をもたらしました。

・そんなミクマク族の文化や歴史の豊かさに触れられるのが、メンバートウ・ヘリテージ公園。20234平方メートルの広大なスペースで、各種展示やプログラムを通じて、先住民ファースト・ネーションズの暮らしを解説する文化発信地です。公園内のキジュレストランは、ミクマク流の料理をベースに、カナダのケープ・ブレトンや世界各地の味を取り入れています。薬用植物園を巡るツアーやドラムづくり、バスケット編み、ビーズ細工、木工アートによる花の制作などが楽しめます。

・また、エスカソニ・カルチュラル・ジャーニーズでは、活気あふれるミクマク族文化の物語を紹介しています。ツアーには、ユネスコエコパーク(生物圏保存地域)に登録されたブラドー湖のゴート島で2.4キロメートルのトレイルを散策するガイド付きハイキングなどがあります。また、スマッジングの儀式や伝統舞踊、狩猟・釣りのテクニック講座なども含まれます。

・メンバートウの薬草の道を歩くガイド付きツアーでは、森の新鮮な空気をたっぷり浴びることができます。静かな森を散策中、ミクマク族が使う伝統薬の解説もあります。また、先住民の大切なお守りであるドリームキャッチャーづくりにも挑戦。素敵な旅のお土産になります。

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