カナダ人はビールが大好き。それもそのはず、1867年のカナダ連邦結成(コンフェデレーション)の前から、すでに地ビールが作られていたとか。つまり、カナダという国はビールとともに歴史を刻んできたと言っても過言ではありません。

エール物語:記録の上では、カナダで初めてビールを醸造したのは薬剤師のルイ・エベールとされています。1600年代初めに自分で飲むために、薬剤師向けの特殊な設備を使ってビールを醸造したそうです。それから100年後の1786年、ケベック州モントリオールのジョン・モルソンがカナダ初のブリュワリー(ビール醸造所)を設立しました。モルソン(後に同じくビール大手のクアーズ・ライトと合併して現在はモルソン・クアーズ)は、カナダ最古のブリュワリーであるだけでなく、北米全体でも最古のブリュワリーです。

醸造の進化:第一次世界大戦前、カナダはマイクロブリュワリー(小規模ビール醸造所)ブームに沸き、全国に117の独立系ブリュワリーがありました。ところが1980年代初めには、わずか10にまで激減、モルソン、ラバット、カーリングオキーフの3社で市場は寡占状態になっていました。アメリカで自家醸造やマイクロブリューイングのシーンが盛り上がると、カナダのビールファンも注目し、動き出しました。1984年にいち早くマイクロブリュワリー事業に乗り出したのが、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーのグランビルアイランドブリューイングと、オンタリオ州ウォータールーのブリックブリューイング(現・ウォータールーブリューイング)です。それからわずか5年後には、BC州とオンタリオ州を中心に40社以上が続々と誕生しました。

ビール醸造の最高栄誉:先月ケベックシティで開催された2021年カナダブリューイング賞授賞式では、カナダ勢が席巻しました。まず垂涎の的であるブリュワリー・オブ・ザ・イヤー(最優秀醸造所)に輝いたのは、アルバータ州カルガリーのエスタブリッシュメントブリューイングカンパニーでした。また、ビア・オブ・ザ・イヤー(最優秀ビール)はサスカチュワン州レジャイナのリベリオンブリューイングが手がける「チェリーランビック」でした。

土地の魅力をボトルに凝縮:カナダのビールシーンは、醸造、サステナビリティ、フレーバーの面で飛躍的な進化を遂げています。カナダのどの州・準州にもブリュワリーやブリューパブ(醸造所併設パブ)があり、女性ビール醸造家も次々に登場しています。業界では、1990年基準でエネルギー消費量を60%近く削減しています。アルバータ州のような土地では、氷河から溶け出した氷河水や肥沃な土壌など、極上のビールの醸造に欠かせない天然の原料が揃っているため、醸造家や農家にとっては、原料の穀物から醸造・販売まで地元にこだわったビールの地産地消体験を消費者に提供できます。クラフトビールの台頭を背景に、トロピカルフルーツや蜂蜜、ココナッツ、唐辛子、乳糖などの魅力的なフレーバーを取り込み、その土地ならではのテロワール(土壌・風土)と醸造家の独創性を反映し、ビールはまったく新たな高みへと引き上げられました。 マイクロブリュワリーから生み出されるビールには、まさにその土地の味わいが詰まっているのです。

ちょっと喉を潤したくなってきましたね。ビールを味わいながら、カナダのビールシーンを堪能してみませんか。

ビール街道:ロードマップ片手にブリュワリー巡りが楽しめるビール街道があります。その一部をご紹介しましょう。

  • BCエール・トレイル:カナダには優秀なビール醸造家に贈られるさまざまな賞がありますが、全体の3分の1はBC州の醸造家が獲得していることをご存知ですか。全国のブリュワリー軒数で見れば、BC州のブリュワリーは5分の1に満たないにもかかわらず、これだけの好成績を収めているのです。それほどおいしいビールなのです。BC州には、180軒強のブリュワリーがあり、その大半が地元のニーズに応えるのに手一杯で、地域外の市場向けに生産する余力はありません。このため、世界的に高評価を集めるBC州のビールの味わいを確かめるには、現地に足を運ぶほかありません。このBCエール・トレイルは、BC州のポートムーディ(ブリュワーズロウの本拠地)やビクトリア(クラフトビール革命発祥の地)など、ビールにゆかりのある地域を結ぶビール街道です。

     

  • グッド・チア・トレイル:ブリュワリー、ワイナリー、サイダリー(シードル醸造所)、ウイスキー蒸溜所を訪ね歩くのに便利なトレイルがカナダで初めて作られたのが、ここノバ・スコシア州です。地元生産者の職人技と創造性の豊かさに乾杯! トレイル沿いには80以上の立ち寄りスポットがあり、各スポットのスタンプを集めると賞品がもらえるスタンプラリーに参加できます。例えばビール党なら、同トレイルのウェブサイトにあるリストで「ブリューパブ(醸造所併設パブ)」と「ブリュワリー」を選ぶと、ビールが楽しめるスポットをチェックできます。
  • コテージ・カントリー・ビア・トレイル:オンタリオ州にあるこのトレイルは、定評ある地元ブリュワリーへのリスペクトを込めて作られました。周囲には、きらきらと水面が輝く湖や緑豊かな森、花崗岩の断崖などが見られます。同トレイルのウェブサイトでは、地域内でクラフトビールを手がける10軒のクラフトブリュワリーの最新ニュースやお知らせ(イベント、ツアー、テイスティング、新製品など)が掲載されています。週末は湖畔でクラフトビールをじっくりと味わってみませんか。
  • ナイアガラ・エール・トレイル:オンタリオ州ナイアガラの特徴はワイン生産地だけと思い込んでいる人が多いかもしれませんが、実はこの地域は多くのマイクロブリュワリーが集まる地域でもあるのです。このトレイルは、新興ブリュワリーから老舗ブリュワリーまで網羅しています。どのスポットにもぜひ試していただきたいお薦めビールがあります。
  • ケベック・ビア・ルート:ケベック州のバ・サン・ローラン、ガスペ半島、コート・ノール、マドレーヌ島の各地域で醸造されているクラフトビールは実に100種類以上。このルートを自由に巡りながら、州内屈指のビールを味わうことができます。ビールに夢中になり過ぎて、ルート沿いの美しい景色を見忘れることのないように。
  • タップルーム・トレイル:アトランティック・カナダ(大西洋に面した4州)でビールの都と言われるのがニュー・ブランズウィック州フレデリクトン。ここを訪れたら、ぜひ足を運びたいのがタップルーム・トレイルです。フレデリクトンの定評あるトレイルシステムを上手に利用すれば、セントジョン川の両岸にある10軒の酒場を効率よく巡りながらビールやサイダー(シードル)が楽しめます。意外な事実:フレデリクトンは、住民1人当たりの酒場の軒数がカナダ第1位。住民5,400人に1軒の割合で酒場があります。

ビール醸造ニュース:カナダでは、新しいブリュワリーが次々に誕生しています。その一部をご紹介しましょう。

  • 2018年にヌナブト準州イカルイトにヌナブト・ブリューイング・カンパニーが誕生した結果、カナダに13ある州・準州のすべてに現役のブリュワリーが揃いました。これは史上初のできごとです。このブリュワリーでは、ラガービールの「フローエッジ」、アイリッシュレッドエールの「オーパクトゥク」(イヌイットが話すイヌクティトゥット語で「赤」の意)、ブリティッシュゴールデンエールの「フロブ・ゴールド」など、北の大地を彷彿とさせるビールが味わえます。ヌナブト準州の州都・イカルイトにある同ブリュワリーに併設のビールとワインの店でビール探しも楽しめます。
  • ニューファンドランド&ラブラドール州のキディ・ビディ・ブリュワリーで席を確保し、爽やかな氷山ビールを。氷山は、圧縮された雪が何万年もかかって形成されます。氷山ビールは、この氷山から採取した水で醸造したビールです。氷山にはミネラル分がないことに加え、小さな気泡が閉じ込められているため、ビールが軽やかで爽やかな味わいになります。
  • 2020年11月にオープンしたスリー・ベアーズ・ブリュワリーは、バンフ国立公園の中心に位置します。周囲には緑豊かな松林や野生動物が生息する森があり、星空観察にうってつけの開閉式ルーフ、屋外ビアガーデン、数カ所のパティオ、森をイメージしたクラフトビールなどの特徴があります。隣接するレストランでは、ブリュワリーで醸造したビールと相性のいい大皿料理をみんなでシェアできます。
  • ニューファンドランド&ラブラドール州ピリーズアイランドにある築150年の歴史ある建物に、先ごろ、バンブリー・バイト・イン&ブリュワリーがオープンしました。この地域の伝統産業である鉱山や貿易をモチーフにした内装が特徴的で、宿泊用の5つの客室、レストラン、さらにハウスビールを自家醸造するブリュワリーで構成されています。豆知識:こちらには地元産の季節のベリー類を使ったサワーもあるので、ぜひお試しを。

 

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