色鮮やかな羽をはためかせ、四方八方へと飛び立つ鳥のような幻想的な生き物を描き出した作品。硬い蛇紋石を素材にしながら、シロクマ(ホッキョクグマ)の姿を驚くほどのリアリティで削り出した作品…。ヌナブトのアートには、常に驚きがあります。作品だけではありません。ヌナブトのアーティストは、一年のほとんどが雪と氷に覆われる地球上で最も過酷な環境で作品を紡ぎ出しているという事実にも、驚かずにはいられません。いや、この環境があるからこそ、カナダ北極圏に生きるイヌイットの人々の生き生きとした想像力がかきたてられているのかもしれません。​

 

ヌナブトといえば、さまよい歩くシロクマやカリブー、海を泳ぐイッカクやセイウチを思い浮かべる人も多いはず。でも、それだけではありません。今もなおカヤックや犬ぞりが主な交通手段という独特な環境から生まれるアートは感動的で独創的、目新しさもあります。実はその背後には、緻密に編み込んだ技が光る編み物文化や珍しい野生生物、狩猟採集民であるイヌイットの伝統的な生活様式がモチーフになっています。ヌナブト準州の人口当たりのアーティスト数は世界一と言えるかもしれません。まさにそんなアーティストたちを育み、刺激を与え続けているヌナブトの大地で、才能あふれるアーティストとふれあってみませんか。おすすめスポットをご紹介します。​

あらゆる要素が溶け合う地、イカルイト

多種多様なアーティストが集う地であり、そんな素晴らしい独創的な才能の一端に触れられる地、ヌナブト準州の準州都イカルイト。例えばヌナブト立法議会の建物ひとつとってみても、伝統的なイヌイットのそりをモチーフにデザインされていて、しかも、建物内には、彫刻や織物、絵画から、ダイヤモンドやイッカクの牙の先端をあしらった見事な職杖(儀式用の杖)に至るまで、数々の印象的なアート作品が所蔵されています。ハドソン湾を望む古い建物を利用したヌナッタ・スナックッタンギット博物館では、現代アート作家による見事な版画や手縫いのモカシンや伝統的な服、イヌイットのきめ細やかなビーズ細工、ハンドメイドの織物、さらには骨、象牙、猛禽類・動物の鉤爪、金属を素材にした珍しい宝飾品が購入できます。注目は、アザラシの皮・毛皮を使って手縫いで仕上げた見事な衣服。思わず感嘆の声を上げてしまうほどです。イノベーターであるランヴァ・シモンセンは、ダウンタウンにあるランバ・デザインという自身のブティックでミトンやスカーフ、ベスト、カラフルな帽子といったファッショナブルなアイテムを販売しています。ヌナブトの音楽やダンス、映画、アートをテーマにした各種フェスティバルはいずれも、カナダの州都・準州都の中で最北端に位置するイカルイトで開催されています。​

版画

ケープ・ドーセット(キンガイット)の地で生み出される個性的で独創性あふれる大胆なデザインのエッチングや石版画・木版画は、世界のアートコレクターや著名人の間で人気を集めています。​

 

バフィン島の南端にあるこの小さなコミュニティには、世界的に定評ある有名なウェスト・バフィン・エスキモー・コーポラティブがあります。リソグラフィ制作を目的に1959年に設立された協同組合で、限定版の各種リソグラフィ作品を制作しています。ケープ・ドーセットはカナダの中でも人口に対するアーティストの数が最も多いコミュニティでもあります。​

 

イヌイット出身アーティストとして世界的に知られる故ケノワック・アッシュバック。ピットセオラック・アッシューナやカナンギナク・ポートーゴーク、ソープストーン彫刻家のパウタ・サイラといった有名なアーティストらとともにケープ・ドーセットに暮らし、独創性豊かな版画を世に送り出してきました。9月から5月までの期間は、彼が使っていた工房が開放され、見学可能です(事前に電話で確認を)。この工房では、版画以外にも蛇紋石を素材にした曲線美が特徴的な彫刻も制作されています。この地に暮らす多くのアーティストはそれぞれの工房で見学を受け入れています(協同組合や地元のツアー会社で見学予約が必要)。ほかにもパングナータングポンド・インレットベイカー湖といった地区に版画で知られるコミュニティがあります。​

音楽、ダンス、舞台芸術

ヌナブトは舞台芸術系のアートも多種多様。6月下旬にイカルイトで毎年開催されているアリアナイト・アート・フェスティバルは、舞台やダンス、音楽、映画を融合した人気の高いイベントです。ステージではイヌイットの喉歌や太鼓演奏といった伝統芸能から、北極圏をモチーフにしたヒップホップやサーカスなどの現代的なパフォーマンスが繰り広げられます。ファンに人気があるのは誰でも自由に参加できる自然発生的なジャム・セッション。4月のイカルイトではトゥーニック・タイム・フェスティバルが開催されます。伝統の喉歌やドラム・ダンス、伝統の遊び、イグルーづくり、各種コンテストなど、まさにイヌイット一色の祭典。コンサートやパフォーマンスのほかにも、アートやクラフト関連のショーがたくさん開催されます。ケープ・ドーセットを始め、多くの村で喉歌のパフォーマンスやドラム・ダンスなどのコミュニティイベントが開催されます。

サーカス芸術

北極圏の「映画の都」とも言われるイグルーリクを拠点に活動するサーカス団、アートシルク。多くの若い団員が活躍しています。枠にとらわれない実験的な舞台芸術集団の側面もあり、現代アートと伝統的なイヌイットの生活を橋渡しすることで、若い世代に積極的にメッセージを発信していくことを目的としています。ビデオや音楽、舞台芸術を通じて、中味が濃くて楽しさもあり、人々に勇気を与える作品づくりに特徴があります。世界を舞台に活動を展開しており、世界中の才能のあるアーティストとのコラボレーションにも積極的に取り組んでいます。イカルイトで毎年開催されるアリアナイト・アート・フェスティバルや、アートシルクが拠点としているイグルーリクでの公演予定・会場については、ウェブサイトでご確認ください。​

タペストリー

バフィン島の小さな村、パンナータング(愛称「パン」)は、人里離れたところにある伝統的なイヌイットのコミュニティで、美しい織物やタペストリーで知られます。美しい巨大なフィヨルドの沿岸に位置し、その圧巻の絶景から“北極のスイス”と呼ばれています。地元アーティストが見事な版画や絵画を制作しており、この土地特有の色鮮やかなタペストリーは毎年数量限定で発売されています。1970年に設立されたイヌイット経営の織物工房、ウクルミット芸術工芸センターは、数多く織機や竪機(垂直織機)を取り揃えた活気あふれる施設。織工の仕事の見学や交流が楽しめます。パンのおみやげとしても人気の帽子パンハットは、タッセルの付いたかぎ針編みの冬用スキー帽。ヌナブト各地でパンハットを被った人たちを目にします。​

ストーンカービング

石を使ったアート作品はイヌイットならでは。ストーンカービング(石彫り)は古代から連綿と伝わるアートです。特にケープ・ドーセットのストーンカービングは世界的に定評があり、多くのアーティストが自宅の工房で制作活動に取り組んでいます。工房は見学を受け入れていて、制作過程や作品のモチーフについて知識を深めることができます。ベイカー湖やアルビアト、イカルイトやランキン・インレットといった地域は、抽象的な作品で知られ、こうした地域でもアーティストとの交流が楽しめます。キムミルートのアーティストは、骨や牙に彫刻を施したスクリムショーやセイウチの象牙彫刻を専門に手がけています。​

 

作品のモチーフには、この世にあるありとあらゆるものが使われていますが、特に多いのはシロクマやセイウチ、海鳥、猟師、北極圏の鳥、イッカクなど、伝統的なイヌイットの生活が感じられる作品が多く見られます。シロクマをモチーフにした作品は、踊っている姿、狩りをしている姿、獲物に忍び寄っている姿、眠っている姿などが定番。また、イヌイットに伝わる神話に登場する生き物たちも人気のモチーフです。サイズは等身大の大きな彫刻から小さめの凝った置物までさまざま。主な素材となる蛇紋石は、アーティスト自身がカヤックで各地をめぐりながら見つけてきます。蛇紋石以外にも、大理石や動物の角を素材にすることもあります。詳しくは、ヌナブト・アーツ・アンド・クラフト・アソシエーションのサイトをご覧ください。​

 

せっかくならオーロラ観賞のベストシーズンである10月〜4月がおすすめです。また、秋に群れで南へと向かうカリブーの大移動の観察も迫力があります。ほかにもヌナブトにはおすすめの観光スポットがたくさんあります。ヌナブトの魅力いっぱいの見どころをお見逃しなく。​

情報収集にはヌナブト準州観光局のウェブサイトをご利用ください。​

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