大都市には、素晴らしい華やかな魅力があります。ガイドブックやブログには、名所や見どころ、定番の繁華街、有名な景色が紹介されていますが、住宅街や隠れた名店、穴場の公園など、無名のスポットは見落とされがちです。実はこうしたスポットこそ、その街の個性を生み出しているのです。そこで、カナダの4つの大都市の個性や魅力があふれる地区をご紹介します。
ケベック州モントリオール
地区:ベルダン
市内の位置:南東部、セントローレンス川両岸
地区の魅力:セントローレンス川のほとりに広がる地区ならではの歴史があり、川沿いの緑豊かな公園は、元々、洪水から街を守るために整備されました。今日では、どの公園も川沿いの自転車専用レーンでサイクリングしたり、近所のスポーツ広場でサッカーに興じたり、草に覆われた河岸で日光浴を楽しんだりと、地元の人々に愛されています。
歴史の一コマ:ベルダンは、カナダ最古の入植地の1つで、2002年にモントリオールに編入されるまでは独立した市として存在していました。
地元の味:シックでインダストリアルな雰囲気あふれるエリアにあるレ・ストリート・モンキーズでは、風味豊かなカンボジア料理のストリートフードが楽しめます。
注目のアクティビティ:シャンプラン・ブリッジを渡り、午後はセントローレンス川に浮かぶナンズ・アイランドでのんびり。緑豊かな郊外の雰囲気が漂い、静かな公園や水辺の散策道、ストロム・ノルディック・スパなどがあります。午後のプラン:建築好きならベルダンの見事な建築巡りがお薦めです。午後は建築物を見学。中でもモダニズム建築のベルダン講堂、伝説のドイツ系アメリカ人建築家ミース・ファン・デル・ローエが手がけた4棟の建物、ノートルダム・デ・セット・ドゥルール教会内部の荘厳な装飾が見ものです。締めくくりはベルダンのナタトリアムの屋外プール。アールデコ様式で、1500人が同時に泳げる広大なプールです。

ブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバー
地区:キツラノ
市内の位置:ダウンタウンから車で15分
地区の魅力:キツラノ(地元民の間では「キッツ」と呼ばれることも)はバンクーバーの縮図。のんびりとした一角もあれば、人通りの絶えない賑やかな一角もあり、オーガニックのカフェあり、素敵な砂浜あり、たくさんのショップが並ぶ繁華街もあります。そんなキツラノにぽっかりと広がる静かな空間と言えば、バニア公園。ここには、バンクーバー博物館、体験型施設H・R・マクミラン・スペースセンター、バンクーバー海洋博物館の3つの人気スポットがあります。夏になると、園内でバード・オン・ザ・ビーチ・シェイクスピア・フェスティバルが開催されます。海に沈む夕日を望む素敵な公園に、公演会場となる巨大テントがいくつも出現し、人気作品が上演されます。
キツラノはトレンド発信地の顔も:格好の例として挙げられるのが、世界的なアスレジャー・ブランドの「ルルレモン」。1998年に設立された小さなヨガ&デザイン・スタジオが出発点となりました。
歴史の一コマ:キツラノという地名は、スコーミッシュ族の首長を務めたオーガスト・ジャック・カツァラーノ(1877年〜1971年)に因んでいます。祈祷師も兼ねていた首長のカツァラーノは、口伝で受け継がれてきた部族の歴史を記録し、バンクーバー地域の他の先住民との協力関係を築くなど、重要な役割を果たしました。60年代になると、キツラノは、ビーチサイドのヒッピーの街として一躍名を馳せます。西4番通り(West 4th Avenue)は「レインボー・ロード」の別名があり、ザ・ナームなど地元人気店は、環境保護運動家らの溜まり場となっていました。それから数十年の歳月が流れ、地元のキツラノ中学校の卒業生の中から俳優のライアン・レイノルズやジョシュア・ジャクソンといった有名人が誕生し、ハリウッドスターの座を獲得しています。
地元の味:地元産食材にこだわった料理や世界の味に影響を受けた料理を味わうなら、ザ・ボートハウス・レストラン、アンナレナ、ファブル、メイナムがお薦め。
注目のアクティビティ:キツラノ・ビーチは海好きに大人気。バンクーバー・ウォーター・アドベンチャーズでは、カヤックやスタンドアップパドルボード(SUP)のツアーを実施。また、レンタルのジェットスキーで波間を疾走する体験も楽しめます。
地元の顔:ライアン・レイノルズ(『デッドプール』主演)はキツラノ出身。生まれ育ったバンクーバーの話題になると、話が止まらなくなるほど地元愛にあふれています。
午後のプラン:ゼア・ゼアでコーヒーと「モチ・ドーナツ」を味わったら、目抜き通りの西4番通り(West 4th Ave.)のブティック巡りでショッピングを堪能。その後、キツラノ・ビーチの海水を利用した温水プール(夏季のみ営業)でひと泳ぎ。続いて新しく誕生したペルシャ料理レストランのデララで贅沢なディナーを。

アルバータ州カルガリー
地区:イースト・ビレッジ
市内の位置:ダウンタウン東側
地区の魅力:イースト・ビレッジは、ボウ川沿いに整備されたリバーサイドの小道で人気があります。ほかにも歴史的建造物や都市型公園、斬新なパブリックアート(建物の壁画など)プログラムなどの魅力があります。歴史の一コマ:キング・エドワード・ホテル(愛称は「キング・エディ」)は1900年代初頭にカルガリーのウイスキー・ロウに建設されました。その後、徐々にブルースの拠点として発展、バディ・ガイやジェフ・ヒーリーといった大物アーティストがここで腕を磨きました。2014年、同ホテルは、スタジオ・ベルの一部として復元されています。現在、キング・エディは、ライブハウスとなり、地元ラジオ局CKUAの本拠として使用されています。
地元の味:かつてマットレス工場だったシモンズ・ビルディングには現在、フィル&セバスチャン・コーヒー・ロースターズ、チャーバー、サイドウォーク・シティズン・ベーカリーというカルガリー発の3つのレストランが営業しています。
注目のアクティビティ:ボウ・サイクルeバイクスでeバイク(電動自転車)をレンタルし、北米最大級の都市型サイクリングコース(全長1,000キロ)で快適なサイクリングを。
地元の顔:地元のレストランのオーナーシェフコンビであるジョン・ジャクソンとコニー・デソーサがイースト・ビレッジで運営するチャーバーやチックス・エッグショップは、地元で親しまれる人気店。午後のプラン:ランチはシモンズ・ビルディングで(晩春から夏の期間なら、迷わず屋上のルーフトップ・バーへ)。ランチ後は、徒歩でカルガリー中央図書館へ。ここにはなんと「短編小説販売機」があります。ボタンを押すだけでレシートサイズの細長の紙に短編作品が印刷されて出てきます。まさに短編小説の自動販売機なのです。数々の賞に輝いたショコラティエのコシュでスイーツ選び。続いてスタジオ・ベルでは、5フロアで構成される展示を通じてカナダのミュージックシーンをじっくり学ぶことができます。締めくくりは、散歩がてらジョージ・C・キング歩道橋を渡ってセント・パトリックス・アイランドへ。丘の上に立てば、豪快なパノラマビューが楽しめます。

オンタリオ州トロント
地区:リバーサイド&レスリービル。
市内の位置:ドン川の東
地区の魅力:リバーサイド&レスリービルには、ブティックやベーカリー、アンティークショップ、流行のレストランなど、小さなお店が軒を連ね、個性と魅力にあふれる一角になっています。さらに、ブロードビュー・ホテルのすぐ目の前のクイーン通りを走るストリートカー(路面電車)を使えば、ダウンタウンまでわずか15分。歴史の一コマ:レスリービルの原形は、1850年代にジョージ・レスリーが経営するトロント・ナーサリーズという保育施設を中心に生まれた小さな村でした。この地域の名称は、レスリーの名にちなんでいます。住民の大半は庭師か、地元のレンガ工場に勤務しています。レスリービルのかつての工業地域は、合わせて9100平方メートルを超えるステージを備えた映画撮影専用スタジオ、スタジオ・シティに生まれ変わっています。
地元の味:色鮮やかなでアート感覚あふれるレディー・マーマレードは、週末のブランチにぴったりの地元人気店。パサジも地元で親しまれている店で、ガラス張りのスペースで、イスタンブール風のペストリーやパン、ブランチが楽しめます。
注目のアクティビティ:アートワークスTO傘下のローカル・ディスカバリーズ・フード・ツアーズでは、ガイドなしで参加者自ら専用アプリを駆使しながら食とパブリックアートのスポットを訪ねる3種類のツアーを提供しています。ガイド役となるアプリ「Driftscape App」は無料で入手できます。お腹を空かせて、レスリービルの食べ歩きに出発しましょう。午後のプラン:遅めのブランチ(お店は上記参照)で1日をスタートしたら、アンティークショップや個性的なブティックが立ち並ぶクイーン通りイーストを散策。夏は、レスリービル・ビア・フェストなど、ブロックパーティ(1つの街区を挙げてのお祭りやイベント)形式のイベントがもりだくさんです。冬には、ロック・オアシスで屋内型ロッククライミングが楽しめます。ブロードビュー・ホテルの屋上から東方面に広がる見事なパノラマを眺めながら、カクテルで夕涼み。
