毎年7月1日は「カナダデー(Canada Day)」です。これは、1867年7月1日に制定された英領北アメリカ法によって、北米にあったイギリス自治領の4州、オンタリオ州、ケベック州、ニュー・ブランズウィック州、ノバ・スコシア州が、カナダ連邦としてひとつにまとまった日を記念する祝日。当日は学校や職場がお休みになりますが、各地で花火が上がり、盛り上がります。カナダデーといえば「建国記念日」として、祝賀ムードに包まれるのが定番ですが、近年ではその様相に変化が見られます。

2021年5月、ブリティッシュ・コロンビア州カムループスで先住民寄宿学校跡地から、子どもたち215人の遺骨が見つかりました。この学校は、建国当時からの政府やカトリック教会による先住民同化政策の一環として建てられたもの。先住民の文化や言葉をなくすための教育が行われ、その過程で多くの犠牲者まで出ていたのです。この痛ましいニュースを受けて、同年のカナダデーから各地でイベントを自粛したり、内容を見直したりする動きも見られるようになりました。このため、カナダデーは、カナダとの「繋がり」を意識する特別な日としての側面が強まっています。

2023年7月1日、156回目の「カナダデー」を迎えます。今年もカナダ各地でさまざまなイベントやフェスティバルが開催されます。コロナ禍を経て、再び盛り上がりが予想されますが、どんな場所からでも、カナダへの理解を深め、先住民への関心と敬意も忘れずに、過ごしたいものです。きっと新しい「繋がり」を体感できるはずです。


Ottawa Tourism

カナダの首都オタワで
カナダデーの盛り上がりを体感するには、首都オタワはぴったりの場所。パーラメントヒルは、50年以上にわたってカナダデーの公式会場となっています。当日は特別な企画や催しが目白押し。午前9時から、カナダのアーティストによるさまざまなアクティビティやショーが行われ、一日中お祝いムードを楽しむことができます。そして午後10時から空を彩るカナダデー花火は必見です。周囲を見回せば、カナダ国旗でお馴染みの「ナショナル・カラー」である赤と白の服に身を包んだ人々が目に付くはず。赤や白のファッションで、地元の人々との繋がりを共有してみてはいかがでしょうか。


Ottawa Tourism

カナダ最東端ニューファンドランド島で
ニューファンドランド&ラブラドール州セント・ジョンズにあるシグナル・ヒル国定史跡では、カナダデーのお祝い一番乗りをめざして、日の出とともに盛り上がります。カナダ政府からの支援により、朝6時にシグナル・ヒルでのサンライズイベント、午後にはキング・ジョージ5世公園で子供向けの娯楽やコンサートが開催。野外コンサートと花火は、午後8時から10時まで、キディ・ヴィディ湖で行われます。カナダ最東端のニューファンドランド島で、日の出を眺め、入植の歴史に想いを馳せながら、カナダデーを迎えましょう。


Signal Hill - Jason Hill

カナダ西海岸の漁村スティーブストンで
かつて鮭の缶詰加工業の中心地として栄えた漁村、バンクーバー郊外のスティーブストンでは、スティーブストン・サーモン・フェスティバルが開催されます。その名のとおり会場では、さまざまなサーモン料理を堪能できるコーナーがあります。このフェスティバルのきっかけは、75年以上前、コミュニティセンターに新しい遊び場を作るための資金を集めるという目的でした。その後、この取り組みに賛同した多くの人を集め、スティーブストンの精神を披露する場として、1945年以降、毎年7月1日にスティーブストン・サーモン・フェスティバルとして開催されるようになりました。日本とも繋がりが深いスティーブストン。同フェスティバルでは、「日本文化ショー(Japanese Cultural Show)」もあり、日系カナダ人コミュニティがスティーブストンの街づくりに貢献していることを表現しています。剣道場での、武道デモンストレーションや生け花、書道、三味線など、日本の伝統的な文化芸術やパフォーマンスを見ることができます。


Tourism Richmond

カナダの国立公園で
夏は爽やかな森の空気が恋しくなります。カナダでは、オートキャンプからバックカントリーまで、あらゆるキャンプスタイルが楽しめます。今年のように7月1日が土曜日にあたる場合、もともと土曜が休日の企業では、月曜も休みにして3連休にするケースも多くみられます。このため、3連休を利用して都会を飛び出し、自然とふれあうカナダ人が少なくありません。アルバータ州のバンフ国立公園やジャスパー国立公園、オンタリオ州のアルゴンキン州立公園、ブリティッシュ・コロンビア州のパシフィック・リム国立公園、サスカチュワン州のグラスランズ国立公園、マニトバ州のライディング・マウンテン国立公園など、カナダには48カ所もの国立公園・国立公園保護区があります。雄大な自然と息をのむような絶景の前では、自然との共生を感じながら、カナダデーを過ごせるはずです。


Riding Mountain National Park

トランス・カナダ・トレイルで
カナダ全土に張り巡らされたトレイル網、トランス・カナダ・トレイル(旧名グレート・トレイル)は、総延長が世界最長を誇ります。つまり、カナダの美しい大自然と触れ合える機会がそれだけ多くあることになります。この世界最長のトレイルには、大都市に近い区間も多く、バンクーバーのスタンレーパークのループトレイルなら、ちょっとした空き時間に散策が楽しめるほか、ノースウエスト準州のデズネセ・ディスカバリー・トレイルのように長めの距離に挑戦することもできます。これらのトレイルはバリアフリー仕様が多く、盛大なセレモニーはなくても、広大なカナダが繋がっていることを実感することでしょう。


Stanley Park

 

 

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