広大な大地、どこまでも続く草原、独特のランドマーク、地産地消型の料理…。多くの旅行者はもちろん、カナダ人の間でも意外に詳しく知られていないのですが、カナダのプレーリー(大平原)は、おおらかな暮らし、充実したマインドフルネスが味わえる文化体験の宝庫です。

注目ポイント・場所:アルバータ、マニトバ、サスカチュワンの3州にまたがるプレーリー地帯は、2,000キロに及ぶ流域に平原、森林、農場が広がっています。この地域は、アルバータ州南部のカナディアン・ロッキーからサスカチュワン州を経てマニトバ州のレッド川流域まで広大な範囲が含まれます。草原はグレートプレーンズの北部を占め、南側はメキシコまで続いています。
哀感漂う光景:カナダのプレーリーでは、日中は暑く乾燥した晴天、夜は冷え込む気候で、冬になるとさらに寒さが厳しくなります。さらに、暖かいチヌーク(シヌーク)風と雷雨もあって、プレーリー独特の哀感漂う季節のある地というイメージがあるのです。

田園生活の雰囲気:プレーリーには、アルバータ州のエドモントンカルガリーなどカナダ屈指の規模を誇る都市があるとはいえ、やはりこの地域の大きな柱となっているのは田園生活です。地元の人々の多くが農業、鉱業、ガス・石油産業に従事しています。果てしない大空の下、小麦、大麦などの穀物の広大な農場の中に町が点在しています。3州内陸部に町や市が散らばり、人口分布にはあまり偏りがありません
サステナビリティの旗振り役:例えば、アルバータ州オコトクスサステナブルなコミュニティ・プログラムに注目が集まっています。オコトクスでも特に先進的な取り組みで知られるドレークランディングというコミュニティは、ソーラーエネルギーやサステナブルな建材・断熱材を使用した住宅、各家庭へのコンポスト設置、雨水再利用のための雨どい・雨水タンクなど環境配慮型の設備を誇ります。同コミュニティは、各家庭の暖房への太陽エネルギー利用率が90%以上と、北米トップ水準にあります。サスカチュワン州クレイクでは、住民が環境配慮型のコミュニティである「エコビレッジ」を立ち上げ、管理されていない土地の区画を1ドルで販売して移住促進に取り組んでいます。こうした活動のおかげで町の人口は増加し、現在、エコビレッジ住民はさまざまな環境保全ソリューションに囲まれて暮らしています。この土地は、いわゆる観光地ではないものの、移住希望者や来訪者のために3つのコミュニティが共同管理しています。


Grain Elevator - Travel Alberta

カナダを代表する豊穣の大地:資源豊富なプレーリーは、昔からカナダの穀倉地帯であり、カナダ経済の重要な柱となっています。カナダ随一の豊かな土壌があり、実際、この国の耕作に適した農地の9割近くはプレーリー3州にあります。カナダ産の小麦、オート麦、大麦、ライ麦、アマ、キャノーラ、マスタード、ヒマワリのほとんどがプレーリーで栽培されています。ベリー類もベリーグッド:この地域は、サスカトゥーンベリー・パイ発祥の地として知られ、主役であるサスカトゥーンベリーはブリティッシュ・コロンビア(BC)州からオンタリオ州にかけてのプレーリー全域に自生しています。サスカトゥーンベリーは、何世紀にも渡って先住民の定番の食材として重用され、貴重なミネラル分とビタミンの補給源になっています。実際に味わってみるなら、サスカトゥーンにあるザ・ベリー・バーンへ。こちらでは、サスカトゥーンベリーを使ったデザートやジャム、ゼリー、各種ギフトを取り揃えています。ウシの王国:アルバータ州は、サステナブルで先進的な牛肉産業で知られ、肉牛生産者が1万8000軒以上あり、牛肉はコクのある味わい、均一な霜降り度合いと肉質の一貫性に定評があります。アルバータ牛の生産者は、倫理的な肥育方法と抗生物質不使用のビーフの業界規格を定めています。

ピエロギの伝統:ピエロギは、プレーリーの中でも特にマニトバ州サスカチュワン州で人気の料理。この辺りは1800年代末にヨーロッパからの移民が大量に入ってきた地域で、その中に多く含まれていたウクライナやポーランドからの移民を通じて文化や歴史、食が伝わりました。栄養満点のピエロギは、餃子やラビオリによく似た料理で、通常、中にはチーズやポテトが詰まっていて、茹でたり焼いたりして食べるところも餃子に似ています。サスカチュワン州サスカトゥーンにあるババズ・ホームスタイル・ピローギーズでは、手作りのウクライナ風ピローギー(ウクライナ系カナダ人はピエロギをこのように発音)をサスカトゥーンベリーやカッテージチーズなどさまざまなフレーバーで提供しています。極上のスピリッツ:アルバータ州は、寒く乾燥した冬のおかげで質の良い穀物が豊富なことから、ライ・ウイスキーの中心地として知られています。カルガリーアルバータ・ディスティラリーズは、国内最古の蒸溜所で、100%のライ・ウイスキーを生産する数少ない蒸溜所の1つ。自社農場で栽培したプレーリーならではの穀物に、カナディアン・ロッキーを源流とする水を加えたスピリッツは、国際的な賞にも輝いています。


Ukranian village - Travel Alberta

重要な物語:アルバータ州マニトバ州サスカチュワン州は、カナダ史としては19世紀の定住促進プログラムにまでさかのぼりますが、実は先住民はすでに何千年も前から暮らしています。1870年、オンタリオ州オタワがハドソン湾会社の所有する広大なルパーツランドという領土の譲渡を受け、その後、カナダ太平洋鉄道も建設された結果、新たな領土を迅速に占有・開発しようと考えたオタワは、入植者に非常に低額で土地を売却する政策を打ち出し、入植者の自作農場所有を奨励しました。新たな時代:こうした白人の入植によって、元々この地に暮らしていた先住民が大規模に、しかも悲劇的な方法で追い出されることになりました。このような歴史上の暗黒の時代の中でも、ブラックフット族、クリー族、オジブワ族、スー族の各ネーションはたくましく生き抜き、今日では、先住民の血を引く人々や文化はカナダの中でもプレーリーに特に集まっています(北極地方除く)。 多くの先住民の女性(主に平原クリー族)が、入植したヨーロッパ人と結婚し、その子孫はメイティと呼ばれ、いわゆるメイティ文化が誕生しました。

中心となる国立公園:サスカチュワン州サスカトゥーンワヌスケウィン史跡公園は、北部平原の先住民に代々伝わる土地にあり、すぐ隣にはサウスサスカチュワン川が流れています。同史跡公園は、6400年以上も長きにわたって先住民の集会の場となっていて、数十年前からはバイソン・ジャンプ(バイソン狩猟に使われた崖)や古代の野営地、ティピーリング(ティピー固定用の石がリング状に並んだ遺跡)、世界最北端のメディシン・ホイール(古代に先住民が作った一種のストーンサークル)など、考古学的に重要な埋蔵物がいくつか発見されています。北米全体でのバイソン個体数回復に向けた保護活動の一環として、2019年には、ワヌスケウィンの伝統ある土地に約1世紀ぶりにバイソンが再び導入されました。 2020年、バイソン保護活動の中で珍しい考古学的発見がありました。300〜1800年前の地層からペトログリ(岩面彫刻)のほか、その彫刻に使われた石器などが出土したのです。サスカチュワン州バルマリーにあるグラスランズ国立公園は、外部との接触がある前の文化遺産が人に荒らされることなく集中的に残っている場としては、カナダ随一と言えます。この公園内では、1万2000以上のティピーリングのほか、ビジョンクエスト(先住民の成人通過儀礼)の場やメディシン・ホイール、バイソンの群れが移動する道などが見られます。また、同公園は星空保護区にも指定されています。しかも、カナダで最も光害が少なく、最大級の保護区とあって、星空観察や、さらに遠くの星雲、銀河といった、いわゆるDSO(深宇宙天体)観測に理想的な環境が整っています。昔懐かしい幌馬車体験、恐竜の骨の探索、星降るような夜空の下でのキャンプなどもこの公園の魅力です。


petroglyph - Wanuskewin Heritage Park

雄大な景色を堪能するライブ旅行:どこまでも平坦で樹木のない大平原を走るトランス・カナダ・ハイウェイ。そんなハイウェイを使ったカナダ横断ドライブ旅行で、プレーリーの広大な景色を初めて見る人も少なくありません。このルートでは、プレーリーの最南端を通過するだけですが、そこからさらに北に向かうと、北方林や河川、湖の景色が広がります。プレーリーを通る別の主要横断ルートとしては、ハイウェイ16号(イエローヘッド・ルート)があります。こちらは、低山や、点在するアスペン・パークランドの森など表情豊かな景色が楽しめます。

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