街のデザインや建築に色濃く反映されるその土地の文化。その意味では、これ以上ないほどの好例と言えるのが、北米初のユネスコ・デザイン都市、モントリオールです。モントリオールの建築・デザインは、「伝統と最先端の文化の共存」、「歴史とモダンの共存」、「375年以上の歴史が溶け合った場所」などと表現されることが少なくありません。街には大聖堂、歴史的建造物、石畳の通りが多く残り、今もイギリスとフランスによる植民地時代の面影があちらこちらに。やがてモントリオールには、オリンピック・スタジアムなどのランドマーク的建築物や、アビタ67団地に代表される中低所得者向け住宅開発プロジェクトなどが誕生し、革新的なデザインの中心地としての地位を揺るぎないものとしています。ちなみに、スタジアムは1976年モントリオール五輪、アビタ67はモントリオール万国博覧会(1967年)のレガシーとして現在も活用されています。
現在、独創性あふれるリーダー的な地位にあるモントリオールは、勢いのあるテクノロジーシーンや巨大なアーティスト・コミュニティでも知られ、これまでにない斬新な形で街の新陳代謝が進んでいます。テクノロジーから輸送機関、音楽、壁画、イベント、環境、食、ファッションに至るまで、街の至るところにモントリオール市民の遊び心や公共心、熱い思いが滲み出ています。


Bath, Laurene

アートと創造性
街の建築物は地元アーティストのキャンバス。モントリオールでは、芸術表現を応援する取り組みとして、60年以上も前からパブリックアートを積極的に奨励しています。1961年にケベック州政府が打ち出した政策のおかげで、公共の建物・施設を建設する場合、建設予算総額の1%を芸術作品の導入に割り当てなければならないと定められています。その結果、ケベック州のあらゆる地域に3500点ものパブリックアート作品が設置されるまでになりました。その一例として挙げられるのが、コンコルディア大学のパブリックアートプログラムです。40人以上のアーティストを起用し、カナダにある大学の中でも最大規模の多彩なコレクションが公開されています。
モントリオール市内には、あちらこちらの建物などに壁画が描かれていて街の彩りや雰囲気づくりに寄与しており、「ミューラル・シティ」(壁画の街)の異名をとるほどです。また、モントリオールには、壁画をテーマにした専門のフェスティバルが2つも開催されています。1つめは「アンダー・プレッシャー」。北米で最長の歴史を誇るグラフィティ・フェスティバルです。もう1つは、世界最大級のストリートアートのフェスティバル「ミューラル・フェスティバル」です。フェスティバルのタイミングを逃しても、市内には1年を通じて数え切れないほどの壁画が見られます。壁画巡りの起点としてお薦めは、サンローラン通り。見逃せないのが、モントリオール出身で数々の賞に輝いているシンガーソングライターで詩人のレナード・コーエンに捧げられた巨大壁画です。市内に2カ所あり、1つは930平方メートル、21階建てビルに相当する高さの巨大壁画です。
公共の広場も市内の随所にあり、市民や観光客が集う憩いの場となっています。こうした環境も、モントリオールが活気ある雰囲気や「joie de vivre」(生きる歓び)にあふれた街として世界的な評判を集める大きな要素になっています。市内には、目的特化型の設計を採用した公共の広場が揃っているため、年間に100件ほどのフェスティバルや公的なイベントが開催されています。その1つが、世界最大のジャズフェスティバルとして名高いモントリオール国際ジャズフェスティバル。世界30カ国から3000人のミュージシャンが出演し、500本以上のライブコンサートが開催され、来場者数は実に200万人に上ります。
同ジャズフェスティバルを始め、モントリオール最大級の催し物の大部分が会場に使用するのは、定評あるフェスティバル広場(Place des Festivals)。2009年には全面的な再開発工事が完了し、6000平方メートルの公共の広場のほか、カナダ最大のインタラクティブ型噴水、成長した木々の植栽、4基の巨大照明が整備されました。この広場の設計を手がけたのは、モントリオールの建築事務所、ダオーレスタージュ(Daoust Lestage)。新旧の地区の架け橋となり、モントリオールの気風を具現化した広場となっています。

地理的特性と環境
モントリオールらしさを生み出している要素の1つが地理的条件。モントリオールは、セントローレンス川の川中島であるモントリオール島に位置します。また、モントリオールという名前は、「モン・ロワイヤル」(フランス語で「王の山」)にちなんでいます。実際に島の中央には、その名の山があり、街のシルエットを作り出しています。このモン・ロワイヤル(標高233メートル)を超える高さの建物の建築は禁止されているほか、モン・ロワイヤルの眺望を遮る建築物も禁じられています。モントリオール市では、建築物の高さ制限の条例を制定し、モン・ロワイヤルより高い建物は建築できないだけでなく、モン・ロワイヤルの眺望を遮るような建物の新築・増築も禁じられています。モントリオールは、環境政策が評価されて「世界で最も持続可能な都市」の環境部門で世界第10位に選ばれたほか、合わせて20平方キロに及ぶ19の大型公園、1200の地域公園を擁するなど「世界で最もグリーンな都市」にも選ばれています。
モントリオールでは、BIXIという自転車シェアリングサービスが提供されており、市内・近隣都市に設置された680カ所以上のステーションで9000台以上の自転車が用意されています。自転車を借りたら返すシステムであることから、自転車本体はブーメランをイメージした独創的なフレームデザインを採用。デザインはケベックを拠点とする工業デザインの草分けで、モントリオール五輪のトーチのデザインも手がけたミシェル・ダレールが担当しました。モントリオールには、全長700キロ超のサイクリングコースが整備されています。モントリオールの自治区の1つであるサンローランには、「生物多様性コリドー(回廊)」が整備されました。都市環境でこの種のプロジェクトが実施されるのは、初のケースです。同コリドーは、約450万平方メートルに及ぶエリアをカバーしており、エリア内にある既存の生物多様性ハブを相互に結び、人間だけでなく動植物の生態の動きをつないでいます。2021年、同コリドーは、カナダ・ランドスケープ・アーキテクツ協会の優秀賞に輝きました。

彩りが生み出す独創性
革新的なテクノロジーは街を輝かせ、モントリオールの代表的な建物や歴史的な建物を通じて、彩りや活力を与え、クリエイティブな表現を実現しています。世界最大級の都市型プロジェクション・マッピング・イベントであるシテ・メモワールは、数々の賞に輝いており、モントリオールや世界の歴史を築いてきたモントリオール出身の有名人から知る人ぞ知る人物までさまざまな人物を取り上げ、インタラクティブ型の無料モバイルアプリも活用して、そのストーリーをプロジェクション・マッピングで紹介します。モントリオールに拠点を置くマルチメディア・エンターテインメント・スタジオ、モーメント・ファクトリーは世界的に有名な存在で、市内にあるさまざまなランドマークを利用して、五感を刺激する魅力的な体験を生み出してきました。具体的には、モントリオール・ノートルダム聖堂の内部で実施したAURAや、SNS投稿や時間帯、天候、季節、通行料などのデータとリアルタイムに連動してジャックカルティエ橋のライトアップやプロジェクション・マッピングが変化する世界初の「インターネット連動型」の橋などのプロジェクトがあります。


Eva Blue

2つの国際イベントが残した建築のレガシー
モントリオールでは、10年の時を隔てて、モントリオール万国博覧会(1967年)とモントリオール五輪(1976年)という世界的イベントが開催されました。それぞれの国際イベントによって残された建築物のレガシーが2つあります。その1つが、建築家モシェ・サフディが手がけた中低所得者向け都市型住宅開発プロジェクト「アビタ67団地」、もう1つがフランスの建築家ロジェ・タリベールが設計した巨大スタジアム「オリンピック・スタジアム」です。どちらも大胆なブルータリズム建築(打ち放しコンクリートのように素材を生のまま直接使用する建築様式)ゆえに物議を醸しましたが、それだけに長きに渡って話題に上り、すっかり街のランドマークとなりました。
もう1つ、五輪のレガシーとして、モントリオール・バイオドームがあります。これは自転車競技場として整備された施設で、現在は、アメリカ大陸で見られる5種類の生態系のレプリカを徒歩で観察できる施設として観客を集めています。このドーム構造を考案したのは、バックミンスター・フラーという建築エンジニアで、その名を取ってフラードームとも呼ばれています。博物館としては、社会と環境の架け橋を担うことを目的に、サステナブル建築を謳った草分け的な建物です。2014年、モントリオール企業のカンヴァがこのバイオドームの拡張事業を手がけた結果、他の3つの施設とともに、カナダ最大の自然科学博物館を構成することになりました。市を挙げて取り組んでいる環境意識の向上やサステナブルな設計もふんだんに生かされています。昨年8月、『ニューヨークタイムズ』はバイオドームを「最も重要な戦後建築25選」に選定しました。

モントリオールの建築資源
モントリオールの活気あふれるデザイン分野では、2万5000人以上の専門家が活動しており、デザイン・建築に携わる企業は3000社以上に上ります。この結果、市の文化関連部門への全体的な経済効果の34%を生み出し、ケベック州全体の労働力の重要な一角を担っています。また、モントリオールの高等教育機関や文化関連機関は、クリエイティブデザインを育むインキュベーターとして、建築分野の人材輩出を担っています。

モントリオール大学建築学部は、建築・都市設計の修士・博士課程があります。
ケベック大学デザインセンター(モントリオール)は、環境デザインの学士・修士課程があります。
カナダ建築センター(CCA)は、建築博物館と研究所で構成されています。また、CCAには、大型図書館・資料館があり、年間を通じて各種展覧会が開催されています。一般向けの研究拠点の機能も担っています。CCAは教育プログラムと文化活動を実施しています。
モントリオール美術館では、美術、音楽、映画、ファッション、デザインなど、さまざまな芸術分野を融合した展覧会を開催しています。5つのパビリオンに展示されるコレクションは、世界のアート作品、各国の文化、現代アート作品、装飾芸術・デザイン、ケベック州やカナダにゆかりのあるアート作品をテーマにしています。
MAQ(ケベック建築会館)は、ケベックやカナダの建築界の発展を目的に掲げ、展覧会や研究所、ワークショップ、教育、その他の活動を通じて、独創性ある建築文化の促進に取り組んでいます。

モントリオールの建築遺産を味わう
ヘリテージ・モントリオール:1975年以来、グレーター・モントリオール(モントリオール広域都市圏)の建築、歴史、自然、文化の遺産の振興・保存に取り組んでいます。さまざまな都市ツアーを開催しており、建築に力を入れるモントリオールの熱意を感じ取ることができます。
ゴールデン・スクエア・マイル:この地区に足を踏み入れると、モントリオールのモン・ロワイヤル斜面に大邸宅や別邸が広がっていた時代を彷彿とさせます。かつてこの街を支えた財界人の足跡をたどり、同地区に立ち並ぶ建築物からその巨大な財力に思い馳せることができます。アメリカの建築家、ブルース・プライスが手がけたチャンセラー・デイ・ホール(1893年)は、スクエア・マイル地区最古の大邸宅や、モントリオール美術館も見逃せません。同美術館の本館は、当時、カナダ最大級にして最も影響力のあった建築事務所マックスウェル・ブラザーズが設計に携わっています。同事務所は、ほかにも市内の上流階級が暮らした多くの邸宅も設計しています。
カルティエ・ラタン:この地区は、長期に渡って衰退傾向にありましたが、現在、大きな変貌を遂げており、地域の再活性化につながっています。この地区には多様な建築が見られます。モントリオール高等商業研究院(1908年〜1911年、現ジル・オカール・ビルディング)、象徴的なモニュメントとなっている旧ビジェ・ホテル・鉄道駅(1898年)、サンジャック教会の鐘楼が併設されていることで知られるジュディス・ジャスミン・ビルディング(1976年〜1979年)などの建物も必見です。

プラトー地区:国際的な雰囲気が漂うカラフルなプラトー地区には、労働者階級の住宅から各種施設、あっと驚くような現代的な邸宅まで、多種多様な建築物が見られます。かつてのビレッジとされた2つの区域を散策していると、建築家のジャック・ルソーが手がけた代表作であるサンルイ広場、メゾン・コロニアル(1990年)、モントリオール最大級の教会であるサンジャン・パプティスト教会(1903年)など多くの素敵な建築物が見つかります。
ドルチェスター広場:先ごろ復元工事の終わったドミニオン広場は、モントリオールが北米で経済発展の強力な原動力となったビクトリア時代から続く権威の象徴です。新たなダウンタウン開発の証しであり、重要な要素となっています。両都市型公園は、現在カナダ広場と接続されていて、新旧混在する教会や壮麗な建築物に囲まれるように1万1000平方メートルの緑地を構成しています。建築家のブルース・プライスの手による旧ウィンザー駅駅舎は、新しいダウンタウン地区やロマネスク・リバイバル建築(ネオロマネスク建築)の国定史跡への文字どおりの玄関口。さらに、建築家コンビのダーリン&ピアソン(下記参照)による壮麗なサンライフ・ビルディング(1913年〜18年、1923年〜26年、1929年〜31年)、建築家ピーター・ディキンソンが手がけた気品漂うCIBCタワー(1962年)も必見です。

デザイン・建築の品質向上をめざすモントリオール2030アジェンダ
サステナブルな都市開発
:現在、モントリオールで活躍するデザイナーや建築家は、未来志向を忘れることなく、独創性や先進性を生かして市民の生活の質を高め、歴史的な建築物に新たな命を吹き込んでいます。「2030アジェンダ」は、デザイン・建築の質を高め、地球的な気候異常事態の課題に対応するモントリオール市の取り組みです。環境面の持続可能性、経済的な採算性、社会的な公平性、文化的な多様性を追求するモントリオールの将来像を指針に掲げています。また、デザイン専門家2万7000人以上の豊富な人材、30年近くに渡って品質・デザイン・建築の支援につながる行政措置を講じてきたデザイン局(Bureau du design)のノウハウや実績、2006年からたびたびユネスコ・デザイン都市に指定されている実績、ケベックの中核都市としてのモントリールの位置付けを考慮したケベック建築戦略の採択計画なども、この街を支える力になっています。

具体的な例:
ヒューマニティ」(Humaniti)は、モントリオール初のスマート・バーティカル・コミュニティTMです。いつでもどこでも五感に訴える充実した体験が楽しめるネット連動型の環境です。ここで暮らす人々の身体的・精神的・社会的な健やかさを増進し、人々の対話を促進するとともに、居住空間の充実をめざしています。また、モントリオールで最も高層の複合用途コミュニティでもあります。内部には、高級ホテルや賃貸住宅、レストラン、ブティック、公共スペースがあります。

スタジオMMAは、1999年にブリ・マンフレディスとロブ・マイナーズがサステナブルな建築を掲げて設立した建築設計スタジオです。ネットゼロ・エネルギーの健康的な住宅を建設する全国規模のプロジェクト「EQuilibrium」の創設メンバー12チームにも選定されています。また、環境に配慮した建設で最前線を走る企業、MECと共同で3店舗を建設し、中低所得者向けの住宅供給を支援する非営利団体「Habitat for Humanity in Canada」で初のLEED認証取得住宅を建設しています。アラン・カルレは、土地に合わせ、主に黒い材木を使った幾何学形状の住宅づくりに定評があります。2016年の「ラ・シャルボニエール」プロジェクトでは、杉の表面を焼いて炭化させる日本古来の焼杉板の技術を採用しました。ボタ・ボタでは、モントリオールの古い港を舞台に、57年も前に作られた古いフェリーボートを、水上北欧式スパに変身させたことで知られます。製作はシド・リー・アーキテクチャー。ボートからエンジンを外してスペースを確保したため、現在の場所に係留されたまま移動はできません。熱源は、地中に埋め込んだ地熱ループに接続しています。
モントリオールの個性を語るうえで、歴史のある多彩な住宅群を挙げないわけにはいきません。そんな住宅街には、素敵な路地があります。庭先では、バーベキューを楽しみ、会話に花を咲かせ、自転車やストリートホッケーに興じる子供たち。そんな生活感あふれる家族の日常が見えてきます。人口密度の高い都市の光景に魅力を感じたスタッフ9人の小さなスタジオ、ラ・シェッド。古き良きモントリオールの住宅を現代的な暮らしに生まれ変わらせています。


Quenneville, André

 

モントリオール市庁舎はカナダで最も人目を引く市の建造物の1つで、ナポレオン3世様式の建築を極めて巧みに表現しているものの1つと考えられています。同建物の屋根は、パリに起源を持つボザール様式の建築から着想を得たものです。1922年の大火事により内部は全焼し、立った状態の外壁だけが残りました。建築家ルイス・ペアレントは同建物の再建を指揮し、残った外郭構造の中に新しい鉄骨構造を作る作業が実施されました。

モントリオール・ノートルダム聖堂の内部は、その複数の凝った彫刻の数々からゴシック・リヴァイヴァル建築の傑作と考えられています。聖堂のとりわけ魅力的でユニークな特徴の1つは、ステンドグラスの窓です。聖書に登場する場面が描かれている一般的な教会のステンドグラスと異なり、この窓は、モントリオールの宗教建築の歴史を伝えています。

オリンピック・スタジアムは、1976年夏季オリンピックの開催に伴い建造されたものです。このスタジアムで印象的な特徴は、現在においても世界で最も高い斜塔に支えられたケーブルの付いた格納式屋根と言えるでしょう。同スタジアムは物議を醸しながらも、モントリオールで最も有名な構造物として、そしてモントリオールのブルータリズム建築流派の実例として存続しています。同スタジアムを設計したフランス人建築家のロジェ・タイイベールは、この建築物について「コンクリート製の詩」を作るようだったと述べています。

ブロック状のミニマリズムが特徴のアビタ67団地もまた、モントリオールで有数のブルータリズム建築の1つです。エキスポ67に向けて建築家のモシェ・サフディが設計したもので、公開から6カ月もの間に5千万人以上の観衆が建物を見ようと足を運びました。サフディが望んだ、適正価格の住宅への革命は起こせませんでしたが、サフディ自身のキャリアの皮切りとしては大成功を収めました。

サンライフ・ビルディングは1913年から1931年の間に建てられたファインアート建築の堂々たる一例です。第二次世界大戦中には、イギリス人が、当時戦争によって荒廃していたヨーロッパからサンライフ・ビルディングの地下にある金庫室に金を移したという、富の動きとして世界で最も広く知られている「フィッシュ作戦」の拠点として重要な役割を果たしました。移された金は「魚」というラベルの貼られた箱に入った状態で移送されました。そして、その金はニューヨーク証券取引所で売却され、イギリスの戦費に充当されたのです。

聖ジョゼフ礼拝堂は、カナダでも最大規模の教会で、世界の教会の中でも指折りの大きさを誇るドームを擁しています。ドームは内部と外部二つの骨組みで構成されており、その間に隔たりがあります。外部のドームは、8つのアーチ、ランタン、十字架、八角形のドラムなど、サンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂と似た構造となっています。モン・ロワイヤルのウエストマウントサミットの上に建つ聖ジョセフ礼拝堂は、モントリオールで最も高い建物の1つでもあります。

モンターニュ砦は、モントリオール島最古の建築物で構成されています。1694年に建造された砦は、1970年にカナダの国定史跡に名を連ねました。砦は、高さ13m、2つの2階建ての石の塔からなり、この2つの塔は17世紀のフランスの要塞かつ伝道の拠点であったかつてのモンターニュ砦の一部でもありました。

マリー・レーヌ・デュ・モンド大聖堂(世界の女王マリア大聖堂)もまた、モントリオールの印象的な宗教建造物の1つです。ダウンタウンエリアに位置するこの大聖堂は、ケベック州で3番目に大きな教会です。有名なネオ・バロック様式のこの大聖堂はローマにあるサン・ピエトロ大聖堂に倣った造りとなっており、1870年から1878年および1885年以降に建設が行われました。

モントリオール世界貿易センターは、カルティエ国際地区内にあります。1992年に完成したこの建物は、「水平超高層ビル」と呼ばれています。外観は19世紀末に一般的であったビジネス街の建物群のように見えますが、実はガラス張りのアトリウムに建物群が包み込まれているのです。歴史的建築と現代的建築の組み合わせの一環として、1992年にモントリオールに寄贈されたベルリンの壁の一部が建物内で一般公開されています。

ポワンタカリエール考古学歴史博物館は、モントリオールで特に有名な博物館の1つです。1992年に設立された同博物館は、3つのパビリオンが3つの遺跡上に建っており、いずれもモントリオールの植民地時代の歴史上重要な時を示すものです。博物館の建設中にも考古学的に重要な発見が複数あり、これらは今も博物館の常設展の一部として残されています。

プラス・ヴィル・マリーは建築家イオ・ミン・ペイとヘンリー・N・コブが設計し、1962年に完成しました。5棟のオフィスタワービルとショッピングセンターを含む複合施設で、ダウンタウンの建築の至宝です。特徴的な十字型のタワーは、こうした建造物においてはカナダで最も高いタワーとなっており、モントリオールの景観の代名詞となっています。

モントリオール港グランドキー 創業20年の建築設計事務所NIpPasageが設計を手掛けたアレクサンダー埠頭復元プロジェクトにより、港の利便性が高まりました。モントリオールは海運会社やクルーズ客の目的地となることがますます増えており、彼らのニーズに応えた形です。モントリオール市民にとって、同プロジェクトは埠頭を都市環境に溶け込ませ、以前から待ち望まれていた海路の利用を可能にするものです。完成により埠頭の豊かな産業用地に光が当たるようになり、現在では新たに展望タワーを建設中です。

ソートリーダーと建築のパイオニア

リュック・ラポルテ- モントリオールで生まれ、生涯同地で活動したリュック・ラポルテ。モントリオールに数々の財産を残し、その中にはモントリオールの都市としての特色を決定づけたプロジェクトもありました。ラポルテは、L’Express、Leméac、ValoisHolder、Laloux、Café du Nouveau Monde (TNM)、Via Roma、Restaurant de l’Institut (ITHQ)など、モントリオールで最も人気のあるレストラン店舗の内部の建築を手掛け、名声を博しました。

フィリス・ランバート- 建築家であり慈善家でもあるフィリス・ランバートは、カナダの建築およびデザインの認知度を高める上で大きな影響を与えてきました。彼女は40年以上も前に、17世紀から20世紀初頭にモントリオールに建造されたグレイストーン・ビルディングの歴史を徹底的に研究しました。この研究によって、1975年にヘリテージ・モントリオールが創立されることになり、その4年後、カナダ建築センターが創設されました。ランバートはグレイストーン・フォトグラフィック2シリーズも手掛け、街の発展、建築的表現、個々の人々といった要素の関連性を明らかにしました。彼女の研究があったからこそ、このシリーズは「街の遺産の保存への意識を高める動機づけとなり、グレイストーン・ビルディングは、モントリオール島全体における統一した感覚を作り出した」のです。

モシェ・サフディ- マギル建築学校で研鑽を積んだサフディの設計は、バンクーバー中央図書館からイスラエルのホロコースト記念館に至るまで、世界中で目にすることができます。彼は今現在においても、駆け出しのころに手掛け、最も物議を醸したモントリオールのアビタ67団地で最も良く知られている人物と言えるかもしれません。

ジュリア・ゲルソビッツ- マギル建築学校の非常勤教授であるゲルソビッツは、カナダが誇る最高位の伝統的建築家であり、歴史的建造物の保存におけるパイオニア、そして最高権威として認められています。

ヘンリー・クレイグ -モントリオールの旧カナダロイヤル銀行の改築を行ったクレイグは、その遊び心がありながらも細密な仕事ぶりに対し、昨年称賛を受けました。モントリオールの中心地に位置する豪華な銀行は柔軟性の高いワークスペースやカフェが併設された技術系スタートアップ企業の現代的オフィスへと生まれ変わりました。一般にも開かれており、かつてから使用されていた真鍮の銀行窓口が、プライベートゾーンと共用ゾーンを分けるために使用されています。

カンヴァ- KANVAはモントリオールの協調的設計スタイルの伝統を継承し、自分たちを「共同体」の建築家集団と表現しています。同社の建築は丹念な実験的スタイルを採用しており、テクノロジー、アート、建築の境界をぼやけさせる取り組みをしています。最近では、モントリオール・バイオドームの再構築に対し、世界建築フェスティバルにて表彰を受けたほか、複数のカナダの建築アワードを受賞しました。KANVAのアイデアが街に与えている影響については、モントリオール鉄道ビルを改築したIrèneから見てとることができます。アルミ製のパネルにランダムに取り付けられたシャッターが、現在は住居フロアとなっている建物の上から3階までの部分の外観をドラマチックに仕立て上げています。

モントリオール- デザインおよび建築における世界的リーダーを反映する年表
1991
-モントリオールは北アメリカの都市で初めてデザインコミッショナーという地位を確立した街です。デザインコミッショナーとは、デザインの発展と促進に特化し、民間企業および公営企業の利害関係者間に対してグッドデザインがもたらす利益に対する認識を高めることを目的とした取り組みをする当事者を指します。
2006 - モントリオールは国際的な設計コミュニティからUNESCOシティ・オブ・デザインとして認知されています。公式な指定というより、デザインと建築のクリエイティブな勢力を中心にモントリオールを発展させていこうという招待と言えます。UNESCOシティ・オブ・デザインは共同運営のプロジェクトで、時間と共に実現させていくために、政治家、市民、専門家、起業家、デザイナーなどすべての利害関係者に対して、プロジェクトに賛同し、自分たちなりの方法で活動することを求めています。
2016-2019 -モントリオールを拠点とする18の企業が、国際的デザインおよび建築競技会にて入賞あるいは最終選考候補となり、モントリオールを拠点とする90以上もの企業が12の国際展示会で展示されました。
2017 - モントリオールはワールド・デザイン・サミットを開催し、デザイン、プランニング、および建築分野の専門家が一堂に会しました。モントリオールデザイン宣言が署名され、国連の2030年持続可能な開発目標に沿った世界の実現のために、デザインが果たす役割を表明しました。
2018 - クリエイト・モントリオール・デザイン行動計画 は、1)経済および文化的成長の原動力となるデザインや建築を支援し、2)モントリオールのデザイナーに向けて地域および国際的な市場を開拓し、3)デザインおよび建築の品質を支持し、4)デザインおよび建築への民衆の認知度を高め、5)UNESCOシティ・オブ・デザインとしてのモントリオールの取り組みを支持し、クリエイティブ・シティーズ・ネットワークを指導するなどの取り組みに3,800,000ドルを充てています。 
2018 - 国際デザイン競技会の「Place des Montréalaises」が設立され、古い街とその郊外、あるいは近辺の郊外との結びつきを回復させました。
2020-2021 - コロナ禍の中、モントリオールはクリエイティブな提案を募集し、その結果モントリオール各地で10もの活動が実現しました。これらの活動は、人々が地域の旅行について調べ、実際に出かけていく人々の割合を増やすきっかけとなりました。この試みは更に発展し、能力、可用性、経験、技術を持ち合わせた、様々な分野の専門家によるデザインチームが作られ、商店街をはじめとしたパブリックスペースにおける19もの暫定都市開発プロジェクトの設計・立ち上げが行われました。

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