世界最長の海岸線を誇るカナダは、ホエール・ウォッチングの本場。カナダを取り巻く大西洋、北極海、太平洋の沖合には、30種以上のクジラが出没します。哺乳類最大の動物であるクジラを観察するベストシーズンは、クジラの種やエリアによりますが、一般にはシーズンは5月〜10月とされています。個体数は少なくても生態系への影響は超大型:クジラは、環境にとっても人類にとっても非常に重要な存在です。クジラは、いわば生態系の巨大な〝エンジニア〟。栄養素をリサイクルし、温室効果ガスを蓄積し、海洋環境を安定化し、さらには魚類の繁栄にも寄与する役割を担っています。また、クジラの研究がヒントになって、船舶用ソナーや風力タービンの羽根など数々の技術が誕生しています。

保護活動の展開:カナダ周辺に生息するクジラは30種以上。そのうち、19種がカナダの絶滅危惧種法(SARA)の「絶滅危惧種」、「準絶滅危惧種」、「危惧種」に相当します。最も絶滅の危機に瀕しているクジラには、タイセイヨウセミクジラ、サザン・レジデント(南部定住型)シャチ、セントローレンス・ベルーガがいます。こうした種は、化学汚染物質や騒音、釣具の絡まり、船舶との衝突など、人間の活動による深刻な影響を受けています。現在、総個体数が400頭を割り込んだタイセイヨウセミクジラの生息数を守るため、カナダ政府は2020年3月、新たな法律を採択しました。この法律では、船舶はクジラから一定の距離を保つ義務が定められているほか、クジラが出現するのに合わせて季節ごとや一時的な禁漁区域が設定されます。クジラ保護のための観光のあり方:観光もクジラ保護の大切な手段になります。例えばホエール・ウォッチングのツアー主催業者は、海洋生物の保護について、社会の意識向上や関心喚起に努めています。チャーチル・ワイルドのオーナー経営者のマイク・ライマーは、『ナショナル・ジオグラフィック』誌のインタビューで次のように話しています。「私たちは常に現場の最新事情を把握していますから、クジラが苦しんでいたり、虐待されたりしている場合、すぐに目撃情報を世界に広め、警鐘を鳴らしています」。観光の際、クジラ保護関連法を遵守している経験豊富な船舶運営会社を利用することで、クジラ保護に貢献できます。太平洋ホエール・ウォッチ協会は、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で所定の基準を満たすツアー会社のリストを用意しています。エコホエール・アライアンスでも、ケベック州のセント・ローレンス地域のツアー会社を対象に、同様のリストを用意しています。


Le Quebec Maritime

カナダ沿岸では、どこでもホエール・ウォッチングが楽しめます。そこで、ホエール・ウォッチングの人気スポットやベストシーズンのほか、クジラ保護に力を入れているお薦めのツアー会社をご紹介します。

ニューファンドランド&ラブラドール州
ニューファンドランド&ラブラドール州は、世界最高峰のホエール・ウォッチングのスポットに挙げられます。同州東海岸沖は氷山が次々に押し寄せることからアイスバーグ・アレー (氷山の通り道)と呼ばれており、ここに数十種のクジラが集まってきます。中でもザトウクジラは、世界最大の生息数(5,000頭以上)を誇り、カラフトシシャモやオキアミ、イカを捕食している姿を垣間見ることができます。海に深く潜るときに水面から高く上げる大きな尾ビレは圧巻です。また、空中に向かって水しぶきを上げる潮吹きも見られます。アイスバーグ・アレーは、ミンククジラ、ベルーガ、シャチ、ナガスクジラを始めとするさまざまなクジラが暮らしています。ベストシーズン:5月下旬にこの海域にクジラが集まり始め、8月(ときには9月)まで頻繁に観察できます。アクセスの玄関口:セントジョンズ。このスポットの魅力:ニューファンドランド&ラブラドール州の沖合では、メキシコ湾流とラブラドル海流という2つの海流がぶつかります。この潮目では大陸棚の海が激しくかき混ぜられ、多くの海洋生物が生息し、そこに引き寄せられるようにクジラが集まってきます。ニューファンドランド&ラブラドール州は、沖合にクジラが見えるほどホエール・ウォッチングに好都合な環境であることに加え、シーサイドに整備されたトレイルのトレッキングを楽しみながら、あるいは釣り船やカヤックからのホエール・ウォッチングも見逃せません。ツアー会社の例:オーシャン・クエスト・アドベンチャーズアイスバーグ・クエストシー・オブ・ホエールズ


Newfoundland and Labrador Tourism

マニトバ州
ハドソン湾西部には、5万7000頭のベルーガが生息しています。毎年夏が来ると、マニトバ州のチャーチル川河口に広がる入江は、およそ4,000頭の摂餌、交尾、出産の場となります。チャーチルでは、この人懐っこいベルーガの生態を観察するボートツアーがあります。非常に好奇心が強く、ボートに近づいてくることも少なくありません。ほかにもホエール・ウォッチングには、スノーケリング、カヤック、スタンドアップパドルボード(SUP)など多彩なオプションが用意されています。ベストシーズン:7月初旬にチャーチル川河口にベルーガの群れが現れ、8月末まで河口で過ごします。アクセスの玄関口:ウィニペグ。このスポットの魅力:チャーチル川河口でカヤックを楽しんでいると、いつのまにか水面に集まってきたベルーガに囲まれていることも。スタンドアップパドルボード(SUP)に乗っていると、何かがツンツンと(優しく)突ついてくることがあります。もちろん、好奇心旺盛なベルーガが一緒に遊ぼうと誘っているのです。ゾディアック船(エンジン付き高性能ゴムボート)を使ったボートツアーでは、ハイドロフォンと呼ばれる水中マイクを使い、「海のカナリア」と呼ばれるベルーガたちの可愛らしい鳴き声を聞くことができます。ベルーガ・アクアグライディングというアクティビティは、ゾディアック船につなげたマットを水面に浮かべ、その上に腹ばいになり、ゴーグルをつけて顔だけ水面につけて海中を眺めていると、ベルーガが寄ってきます。注:ベルーガ観察中はとても素敵なひとときを過ごせますが、連邦政府の規則により、人間がベルーガに近づいたり、動きを邪魔したりすることはできません。ツアー会社の例:フロンティアーズ・ノース・アドベンチャーズシー・ノース・ツアーズレイジー・ベアー・エクスペディションズ

BC州
BC州のホエール・ウォッチングのシーズンは、2万2000頭のコククジラがバンクーバー島西海岸沖に集まってくる3月から始まります。その後、コククジラの群れは、夏の餌場を求めてベーリング海へと北上します。この移動は、実に8,000キロにも及び、あらゆる動物の中でも最長の移動距離となっています。夏には、バンクーバーやビクトリアからシャチの姿を見かけることもあります。BC州の本土とバンクーバー島の間には86頭のシャチが生息していると推定されています。野生動物ファンにぜひお薦めしたいのが5月〜10月。プリンス・ルパート近くやバンクーバー島北部の沖にザトウクジラやミンククジラの姿が見られることも。ベストシーズン:3月中旬にクジラが現れ始め、10月までシーズンが続きます。アクセスの玄関口:バンクーバービクトリアナナイモ。このスポットの魅力:BC州は、シャチやザトウクジラ、コククジラなど海の動物たちに出会える世界屈指のベストスポット。特にビクトリアは、世界的に最もシャチが多く生息する地域の中心にある海辺の街とあって、シャチのウォッチングで定評があります。ホエール・ウォッチングのシーズンになると、シャチとの遭遇率は実に95%とされています。ツアー会社の例:オーシャン・アウトフィッターズ(トフィーノ)、コースタル・レインフォレスト・サファリス(ポート・ハーディ)、プリンス・オブ・ホエールズ(ビクトリア、バンクーバー

ケベック州
ケベック州の沿岸地域、特にコート・ノール地域は、世界でもトップクラスのホエール・ウォッチング・スポットとして人気があります。5月から10月にかけてセント・ローレンスには、ザトウクジラなど最大13種のクジラが出現し、餌場となるタドゥサック近くのサグネ・フィヨルドの入り口辺りに集まってきます。この海域では、シロナガスクジラ(地球最大の動物であり、絶滅危惧種)数頭の姿を目にすることもあります。セント・ローレンスは、海岸付近でシロナガスクジラに遭遇できる世界でも数少ない地域です。ベストシーズン:ケベック州では、年間を通じてベルーガに出会えます。それ以外のクジラに関しては、6月から10月初旬にコート・ノール、サグネ・セント・ローレンス海洋公園、ガスペ湾、セントローレンス湾で遭遇できます。アクセスの玄関口:ケベックシティ。このスポットの魅力:サグネ川は淡水であるのに対して、セントローレンス川は塩水。この2つの川が合流するタドゥサック村周辺の海中では、3つの潮の流れが豊富なプランクトンなどクジラの餌を育むことから、ホエール・ウォッチャーの楽園となっています。ツアー会社の例:クロワジエールAMLメール・エ・モンド・エコトゥール

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