2022年2月4日から2月20日まで中国の北京で開催される第24回冬季オリンピックに向けて、世界的に熱気が高まりつつあります。

チームカナダ:今回の冬季五輪には、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)の選手がアイスホッケー男子チームのメンバーとして出場しますが、NHLの選手が出場するのは、2014年のソチ五輪(ロシア)以来となります。ソチ五輪では、チーム・カナダが金メダルを獲得しており、再びカナダが表彰台の中央に上ることができるかどうか国中の期待が高まっています。

常勝軍団:ウィンタースポーツは、いわばカナダのお家芸。カナダの選手が世界の頂点をめざして戦う姿は、ハートを熱くするものです。そして彼らが表彰台の中央に立つことも決して珍しくありません。カナダは、メダル獲得数で世界第5位。その内訳は、金が73個、銀が64個、銅が62個です。2010年にブリティッシュ・コロンビア(BC)州バンクーバーで開催された冬季五輪でカナダは14個の金メダルを獲得し、1回の冬季五輪での国別金メダル獲得数で新記録を打ち立てました。

ウィンタースポーツの本場:雪と氷と山々に囲まれて育ったカナダ人にとっては当たり前のこと。それはカナダらしさやカナダ文化の一角を担うものであり、その根底には、どこまでも続くクロスカントリースキーのコース、アイスホッケーやスケートにぴったりの均質に結氷する湖・運河、類稀なスキー場を生み出す雄大な山々など、独特の地理条件が挙げられます。西部には、圧倒的存在感を放つカナディアン・ロッキーがブリティッシュ・コロンビア州とアルバータ州にまたがるようにそびえたっています。この冬の楽園があるからこそ、カナダは過去に2つの冬季五輪の開催国となり、チーム・カナダが常にメダルを量産しているのです。

2022年に中国で開催される冬季五輪は、コロナ禍の制限措置により、会場に直接足を運ぶことができるのは国内の観客に限定されます。しかし、カナダにいてもその熱気を感じる機会はたくさんあります。過去に冬季五輪開催地となった自然豊かなブリティッシュ・コロンビア州バンクーバー(2010年開催)とアルバータ州カルガリー(1988年開催)では、特に大きく盛り上がるはずです。冬を大いに楽しみ、過去の五輪遺産を肌で感じながら、オリンピック級の大きなスリルと寒さを体験する旅程のサンプルをご用意しました。

カルガリー・オリンピックの軌跡をたどる冬の旅

冬に輝く国際都市、カルガリー。冬らしくひんやりとした日々が続くとはいえ、晴天日は1年に333日もあるだけに、地元住民にしてみれば、カナディアン・ロッキーという世界一流のスキー場からほど近いエリアで休暇を過ごしたくなるのもうなずけます(カルガリーからバンフまで車で1時間半でサンシャイン・ビレッジレイク・ルイーズ・スキー・リゾートなど、世界的に知られる巨大スキーリゾートが5つもあるのです)。また、市内には、1988年の冬季五輪の遺産として残されたウィンスポーツでのスキーやスノーボード、チヌーク・ブラストなどの冬のフェスティバル、有名なバンフ国立公園で唯一の温泉プールであるバンフ・アッパー・ホット・スプリングスなど屋外プールをはじめ、楽しいスポットが多数あります。

1988年のカルガリー冬季五輪の際には、5つの新規施設が建設されました。こうした五輪遺産のおかげで、この地域には、ウィンタースポーツの多くのカナダ代表チームが拠点を構えるようになり、これが後の2010年冬季五輪でカナダ勢の好成績を生み出す一因になったとも言われています。カルガリーでは、カナダ・オリンピック・パークやオリンピック・オーバルを含む元五輪会場の施設が現在も活躍しています。誰もがあらゆるスポーツを楽しめる場として、選手のトレーニング、冬のスポーツイベントの開催などに一般開放されています。

五輪当時、ほとんどの競技はカルガリーで開催されましたが、アルペンスキー競技はカナナスキスのナキスカ・スキー・リゾートで開催されました。ここはケイビング(洞窟探検)アイスクライミング、凍結した滝の見学など、さまざまなアクティビティが楽しめる冬の遊び場となっています。また、ノルディック競技(クロスカントリー、バイアスロン)は、キャンモア・ノルディック・センター州立公園(キャンモア)が会場となりました。カナディアン・ロッキーの一部をなすボウ・バレーに位置し、バンフ国立公園に最も近い大きな町として知られます(ちなみに、住民に占めるオリンピック選手の割合はキャンモアが世界一と言われます)。カナナスキスとキャンモアはどちらもカルガリーから車で1時間です。今回ご紹介するのは、この地域のオリンピック遺産を巡る1泊2日の旅程です。


Travel Alberta

第1日目:カルガリー市内のスキーゲレンデ、チュービングパーク、オリンピック規格のボブスレーコースがあるウィンスポーツ(オリンピック公園)からスタートします。ジェットコースターなど絶叫マシン好きにお薦めなのが、ボブスレー。最高速度80キロでカーブも10回はあるコースを滑り降ります。

  • ひと汗かいたら、車で15分ほどのオリンピック・オーバルへ。ここでは、数々の好記録を生み出した「世界最速リンク」でスケートを楽しむことができます(一般向けスケートスケジュールをご確認ください)。世界最速の秘密は、不純物を取り除いた脱塩水で製氷したリンクと、湿度、温度、空気循環のモニタリングシステムです(さらに氷表面を滑らかにする巨大製氷車「ザンボニー」も活躍しています)。
  • 今回の宿泊はカルガリーのダウンタウンに新規開業したウェスリーホテル。夕食は賑やかなスポーツバー、ホーム&アウェーで。みんなに人気のお馴染みのメニューが揃っています。

第2日目:翌朝はカルガリーから車で1時間のキャンモアに向かいます。めざすはキャンモア・ノルディック・センターです。こちらには、全長65キロ以上に及ぶ圧雪コース(一部は夜間スキーのための照明完備)を含むバイアスロンとクロスカントリー・スキーの施設があります。

  • 一息つくのにぴったりなのが、グリズリー・ポウ・ブリューイング。地元のクラフトビールと心のこもった料理で人気です。
  • 車で40分ほど走ると、家族連れで楽しめるスキー場、ナキスカ・スキー・リゾートがあります。ここには、今も聖火が赤々と燃えています。スキー、スノーシューはもちろん、チュービングの施設もあります。たっぷり遊んだら、フィニッシュ・ライン・ラウンジで栄養たっぷりの食事をいただき、ゆったりリラックス。

バンクーバー・オリンピックの軌跡をたどる冬の旅

カナダ西海岸最大の都市、バンクーバー。そびえ立つ山々、緑豊かな森、太平洋に囲まれていて、アウトドア志向のライフスタイルを楽しむ環境が整っています。冬になると、グラウス・マウンテンサイプレス山シーモア山など、近隣のマウンテンリゾートにスポーツ好きが集まってきます。いずれもダウンタウン中心から車で1時間以内とアクセスも良く、スキー、スノーボード、スノーシューなど、あらゆる雪遊びが楽しめます。周辺で冬の休暇を過ごす地元の人々は、海沿いの風光明媚な景色で人気のシー・トゥー・スカイ・ハイウェイを車で2時間ほど走り、ウィスラーをめざします。言わずと知れた世界屈指のマウンテンリゾートであり、北米最大のスキーリゾートです。ウィスラー山とブラッコム山の山並みを望む魅力あふれる山間の村。面積33キロ平方メートルの村内には、ゲレンデが200以上あり、さらにコース外のエリアも多数あります。雪で1日たっぷり遊んだら、居心地の良いレストランや賑やかなパブ、食やショッピングなどアウトドア志向の専門店が揃い、アフタースキーも充実しています。

2010年、バンクーバーでオリンピック・パラリンピックが開催されました。この大会はサステナビリティの新たな基準を打ち出し、いち早くカーボンオフセットプログラムや意欲的な気候変動対策に重点を置いたパイロットプロジェクトが実施されました。例えば、選手が滞在するオリンピック村の暖房に使われた熱の70%は、排水施設で発生する熱を含め、排熱回収システムで賄われました。このオリンピック村は、ウォーターフロントに位置し、現在、世界トップクラスの環境に配慮したコミュニティとして知られます。また、住宅、公園、レストラン、商業地区などを備え、さまざまな活動の拠点として人気を集めています。バンクーバーの公共輸送機関スカイトレイン3路線のうち、カナダラインは、オリンピック開催に合わせて建設されたもので、バンクーバー国際空港とダウンタウン中心部を高速列車で結びます。また、五輪に合わせてフェリーのシーバス、高輸送効率を誇るスカイトレインやハイブリッドバスが登場した結果、公共交通機関の利用が大幅に増加し、温室効果ガス排出削減に寄与しています。

バンクーバー大会では、サイプレス山リッチモンド・オリンピックオーバルウィスラー・オリンピック公園など、バンクーバーやウィスラーに点在する15会場が使用されました。いずれの会場も、先住民であるスコーミッシュ族、ツレイル・ウォウトゥス族、マスキーム族、リルワット族の伝統的な領地に建設されました。2010大会の計画・演出にも先住民が協力し、4つの先住民族が「Four Host First Nations」(「五輪受け入れ地となった4つの先住民コミュニティ」の意)として初めて結集するきっかけにもなりました。以来、BC州の各自治体が先住民のインクルージョンに取り組む姿勢を明確に打ち出しています。


Destination BC

第1日目:バンクーバーの旅にオリンピックにゆかりのあるスポットを加えるとすれば、バンクーバーのダウンタウンにあるウォーターフロントでしょう。ここにあるジャック・プール・プラザには、本物の聖火台が恒久的なランドマークとして保存されています。バンクーバー・コンベンション・センターには、オリンピック・レガシー展示があります。バンクーバーを離れる前に、アパレルブランド、ルルレモンの旗艦店(ロブソン通り970)に立ち寄りましょう。チーム・カナダの「トーク」(カナダ独特のニット帽)やカナダ限定販売のウィンターウェアが揃っています。カナダ生まれのルルレモンは、チーム・カナダの公式アパレルブランドに選定されました。

  • 再び車に乗り込み、30分ほどのサイプレス山へ。2010大会の際、フリースタイル・スキーやスノーボードの会場となった場所です。ナーリーズ・チューブ・パークには、全長100メートルほどのチュービング・コースが6本あり、大きなタイヤチューブに乗って雪山を滑り降りるスリリングなひとときを過ごせます。なお、夏季に訪れるときは、最高時速40キロのライドで全長1,700メートルのコースを爽快に駆け抜ける新アトラクションのイーグルコースターをお忘れなく。
  • 風光明媚なシー・トゥー・スカイ・ハイウェイを走ってウィスラー(車で1時間半)に向かい、ディナーはダスティーズ・バー・アンド・BBQで。こちらは気軽に楽しめる人気店。クリークサイド・ゴンドラ乗り場のすぐそばにあり、大きなパティオもあります。宿泊は、パンパシフィック・ウィスラー・マウンテンサイドにチェックイン。カナダの有力スキーリゾートの中では常に高い評価を集めています。

第2日目:翌朝は、散歩がてらに30分ほど歩いたところにあるウィスラー・スライディング・センターに行ってみましょう。実はここ、本物のボブスレーが体験できるのです。10カ所のひねりやカーブを時速125キロで疾走。滑走中には最大4Gの重力がかかります(ちなみに、オリンピックのボブスレー競技の場合、スピードは最高150キロに達します)。

  • 次のスポットは車で30分のウィスラー・オリンピック公園。今度は、クロスカントリー・スキーとライフル射撃を組み合わせたバイアスロン競技に挑戦します。この公園では、あらゆるレベル向けのバイアスロン教室が開催されています。さらにスノーシュー用に全長30キロ以上のコースもあり、周囲の山並みの絶景を眺めながら、誇らしげに立つオリンピックのモニュメントの間を縫うように進んでいきます。
  • 最後のスポットは、印象的な建物で知られるオーディン美術館です。カナダの多様な文化遺産、とりわけ先住民の声を強く反映した膨大なアートコレクションが収蔵されています。

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